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蒼矢にアイシングを続けてもらう啓介は、心地良い冷えに顔を緩めながら彼を見上げた。
「ありがとな、髙城。先生紹介して貰って助かったよ」
「いや、沖本が怪我したのは俺が原因だから。明日きちんと病院行ってくれ。診療費も、後で――」
「そこまでは気にすんな、ほんとに。奴らを煽った俺が自業自得でやっちまっただけなんだから。…くそー、結局やられ損で終わっちまった。やっぱり一発くらいやり返したかったなぁ…」
「もー、血気盛ん過ぎだよ」
まだくすぶっている啓介へ呆れながら、諒も横から付け加えた。
「髙城が沖本を止めてくれて良かったよ。俺もなんとかしようとしたけど、うまく抑えられるか正直自信無かった。…髙城、あの先生の武道教室通ってるんだろ?」
諒から不意にそう問われ、言い当てられたせいか蒼矢は少し目を見張り、視線を外しながら小さく頷いた。
「やっぱり。止めた時の動きが、まるっきりの素人じゃないように見えたからさ」
「ええっ、お前武道もやれんの!? どこまで完璧人間なわけ?」
「…人に言えるほどじゃないよ。通ってるって言っても週に1,2度くらいだし、体力づくり程度だから」
諒に続いて啓介も驚きの声をあげると、蒼矢は頬を染め、恐縮するように身を縮めた。
「謙遜してるようだけど、思わず見入っちゃうような身のこなしだったよ。咄嗟の機転も含めて、君が入らなかったらきっとあの場は収まってなかったと思うし、充分誇っていいと思う」
「…ありがとう」
「つまり、あの時髙城にその気があったらまとめて叩きのめせてたってこと? なんだよー、あんな人を小馬鹿にした奴ら、遠慮してないでひと思いに2,3発喰らわせてやりゃ良かったのに」
「沖本。それ本気で言ってないよな…?」
「! じょ、冗談に決まってるだろおっ…!?」
「武道は心身を鍛えるものであって、俺は喧嘩するために習ってるわけじゃない」
「わ…わかってるって…!」
ふたりから睨まれ、つい本音が出てしまった啓介は慌てて取りなした。
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