第13話_見守る眼差し

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蒼矢(ソウヤ)にアイシングを続けてもらう啓介(ケイスケ)は、心地良い冷えに顔を緩めながら彼を見上げた。 「ありがとな、髙城(タカシロ)。先生紹介して貰って助かったよ」 「いや、沖本(オキモト)が怪我したのは俺が原因だから。明日きちんと病院行ってくれ。診療費も、後で――」 「そこまでは気にすんな、ほんとに。奴らを煽った俺が自業自得でやっちまっただけなんだから。…くそー、結局やられ損で終わっちまった。やっぱり一発くらいやり返したかったなぁ…」 「もー、血気盛ん過ぎだよ」 まだくすぶっている啓介へ呆れながら、(リョウ)も横から付け加えた。 「髙城が沖本を止めてくれて良かったよ。俺もなんとかしようとしたけど、うまく抑えられるか正直自信無かった。…髙城、あの先生の武道教室通ってるんだろ?」 諒から不意にそう問われ、言い当てられたせいか蒼矢は少し目を見張り、視線を外しながら小さく頷いた。 「やっぱり。止めた時の動きが、まるっきりの素人じゃないように見えたからさ」 「ええっ、お前武道もやれんの!? どこまで完璧人間なわけ?」 「…人に言えるほどじゃないよ。通ってるって言っても週に1,2度くらいだし、体力づくり程度だから」 諒に続いて啓介も驚きの声をあげると、蒼矢は頬を染め、恐縮するように身を縮めた。 「謙遜してるようだけど、思わず見入っちゃうような身のこなしだったよ。咄嗟の機転も含めて、君が入らなかったらきっとあの場は収まってなかったと思うし、充分誇っていいと思う」 「…ありがとう」 「つまり、あの時髙城にその気があったらまとめて叩きのめせてたってこと? なんだよー、あんな人を小馬鹿にした奴ら、遠慮してないでひと思いに2,3発喰らわせてやりゃ良かったのに」 「沖本。それ本気で言ってないよな…?」 「! じょ、冗談に決まってるだろおっ…!?」 「武道は心身を鍛えるものであって、俺は喧嘩するために習ってるわけじゃない」 「わ…わかってるって…!」 ふたりから睨まれ、つい本音が出てしまった啓介は慌てて取りなした。
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