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「…なぁんだ、喧嘩だったの? 今時の若い子でも、意外とまだまだやんちゃなんだねぇ」
そのタイミングで葉月が戻り、大学生たちの会話にくすくす笑いながら、手に持って来た盆をテーブルに置く。
盆にはお茶と、混ぜご飯で作ったおにぎりが並べられていた。
「お腹空いてると思って。おにぎりなら左手でも食べられるでしょ?」
「…!! そうなんです、俺もう腹ぺこでっ…先生、なんでわかったんすか?」
「さっき蒼矢から連絡貰った時、食事中だって聞いてたから」
「マジありがたいっす、いただきます!」
「君たちもどうぞ」
目を輝かせてかぶりつく啓介を見、勧められた蒼矢と諒もひとつ手に取る。
美味しそうに頬張る姿を眺めながら、葉月は蒼矢へ視線を送る。
「…なにかトラブルでもあったの?」
「! いえ…」
「いや、そうなんですよ。髙城が質の悪い輩に絡まれちゃって。プライバシーもろ晒しの取材とか、盗撮とか。挙句に学部まで馬鹿にしてきたもんだから、それで――」
「大学内でのことなんです。他学部の先輩と…ちょっと」
啓介の発言に、怪訝な面持ちになる葉月を見、蒼矢は途中で遮って取り繕った。
「…大丈夫です、もう解決しましたから。葉月さんの心配には及びません」
「…そう?」
蒼矢は不満そうな表情を浮かべる啓介の前に割って入り、葉月を言い聞かせるように締める。
それ以上は追及しなかったものの、葉月は後ろの諒へちらりと目を向ける。
その真意を問うような視線を受けた諒は、思わず目を逸らしてしまった。
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