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啓介の考察に、諒は目を見開き彼へ振り向く。
しかし、驚嘆の面持ちを向けられる啓介の表情は曇っていて、歩く足元を睨んでいた。
「でもなー、俺そんな距離感調整出来るような器用な人間じゃないからなぁ…先輩みたいに立ち回れるか、自信無いわ」
「沖本…」
眉を寄せて思い悩む啓介を見、彼の考察を受けて気付きを得た諒は、少し考えてから口を開く。
「…別に、エイト先輩の真似をする必要は無いと思うんだ。さっきの先生だって付き合い方は違うだろうし、先輩のやり方が正しいとも限らないだろ?」
「…! そうだけど…」
「出会ったばかりの俺たちは、逆にまた新しい付き合い方を探っていけばいいんじゃないかな。…"お近付きになりたい"って言ってたろ。まだ1ヶ月しか経ってないのに、心折れるのは早過ぎるよ」
「そっか…うん、そうだな…!」
諒の助言に、暗い顔を晒していた啓介は、同じように気付きを得たようだった。
「それに、沖本は熱くて割と世話が掛かる奴だけど、髙城はそういう奴は嫌いじゃないと思う。きっと気に入られるよ。…俺は君たちの間に入って、美味いポジションを分けて貰うとするよ」
「…!? なんかさりげなく、お前らからの俺の印象ガキ臭くねぇ…!?」
「実際そうなんじゃない?」
「!! …まぁ、末っ子だけどさ」
若干不貞腐れた啓介だったが、すぐに面持ちを戻し、にやりと口角を上げてみせた。
「やっぱり良い奴だな、川崎。俺に必要な言葉をくれる。適度に茶化すところも含めて満点だ」
「それはお互い様だよ」
諒もニッと笑い返し、顔を見合わせて少し頬を染めたふたりは、ホームに滑り込んできた電車へ並んで乗り込んだ。
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