2.のっぺらぼうの探し物

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「それで? なんでお前が宮下に話かけてるんだよ」  紫月くんがイライラしたように言った。 「俺たち(ようかい)にモテモテの子がどんな子なのか気になったっていうのもあるけど、実は2人に頼みたいことがあって」 「頼みたいこと?」 「そう。実はさぁ」 「……は?」  顔の一部を失くした? 普通に生活していたら絶対に聞かない台詞だ。なんていうパワーワードだろう。 「それで、2人に一緒に探してほしいんだよね。ほら、人数は多い方がいいじゃん?」  面無くんは口元のマスクを指差しながら言った。……ということは、失くしたのは口のシールってこと? え? じゃあ今どうやって喋ってるの? 答えを聞くのが怖くて、私は考えることをやめた。 「全パーツ週に一回は交換してるんだけど、口のシールだけなくて。今はマスクで隠してるからいいけど、口ってないと不便じゃん? 給食の時とか誤魔化すの大変で」  さっきからめっちゃ怖いこと普通に言ってるんですけど! 助けて紫月くん! 「つーかなんで失くしたんだよ。落としたのか?」 「はじっこがひっかかって破れちゃったんだよ。それで、いつも持ってる予備のシールを探したらなくて。だから頼む! 探すの手伝ってくれ!」  面無くんは顔の前でパン! と手を合わせてお願いする。それを見て、紫月くんはため息をついた。 「こっちに来た妖怪の面倒を見るのも仕事の一部だからな。仕方ない。探してやるよ」 「さっすが周くん! ゆかりちゃんも手伝ってくれる?」  キラキラした目でお願いされたら、ノーと言えないお人好しな私は断れない。 「……わ、わかった」 「やったー! じゃあさっそく探しに行こう!」  私は小さくため息をついて、歩き出した面無くんの後ろをついて行った。 「あー。今すぐマスク外してみんなのこと驚かせたい」 「お前な、そんなことしたら一発で強制送還だぞ」 「わかってるってー。だから我慢してんじゃん!」  そんな物騒な会話をしながら、私たちはシールを探す。
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