4人が本棚に入れています
本棚に追加
*
迎えた放課後。
本当はすぐにでも紫月神社に行きたかったけど、担任の田中先生に頼まれ事をされてしまい、出発するのが予定より遅くなってしまった。眉間にシワを寄せた紫月くんの不機嫌顔が思い浮かんで、急いで昇降口に向かう。
静かな廊下を進むと、うちのクラスの下駄箱の前に立っている女の子を見つけた。片方の手で口元を覆っているけど、彼女には見覚えがある。
「……井上さん?」
声を掛けると、彼女は勢いよく振り向いた。私を見て驚いたように目を見開くと、口を押さえたまま走り出す。その時、上着のポケットから手紙のような紙がひらりと落ちた。
「えっ!? あ、ちょっと待って!」
呼び止めるけど、井上さんはこちらを振り返ることなく走って行ってしまった。
どうしたんだろう井上さん。明らかに様子がおかしかった。何かに怯えてるっていうか、まるで人を拒絶してるような……。
私は拾った手紙を見つめる。宛名は書いてないけど、これは井上さんに返した方がいいよね? 今からじゃ追い付けないから明日の朝イチで返そうと決め、私は紫月神社に向かった。
最初のコメントを投稿しよう!