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二人の背後、そう……私の目の前には、さっきまで誰も座っていなかったはずの部屋の奥の椅子に、小さな女の子がちょこんと座っているのが見えたから…… 「ひっ!」 私の悲鳴に、二人がびくっと肩を震わせる。 「直子!脅かさないで!」 「そうだよ!やめてよ!」 批難の目を向けられるが、私はこれ以上声が出せなくて、そっと後ろの女の子の方を指さした。 「わー!何?さっきまでいなかったのに?なんで!どうして!幽霊ーーー!」 そちらを剥いた絵里が混乱して叫び出す。 裕子はもう口をきゅっと閉じて泣くのを我慢しているようだった。 「に、逃げよう!」 私は、後ろにある隣の部屋に続くはずの扉を慌てて開く。 そして慌てた3人がなだれ込み、絵里が急いで入ってきたその扉を閉めた。 三人のはあはあと荒い息がひびく。私は少し生臭さを感た。 「こ、ここは?」 「なにここ、それに変な匂い……」 「何か腐った匂いがするよ?どうしよう?うう、もう帰ろうよ……」 泣きそうな裕子だが私だって今すぐにでも帰りたい。 でも、果たしてその右側に見える階段のある広間に続くはずの扉が、ちゃんと開いてくれるのか疑問に思っていた。 ゆっくりと部屋を見渡して状況を確認する。 キッチンに冷蔵庫、鍋なども見える。どれも薄汚れているが……どうやらここはキッチンのようだ。 さっきまでの部屋は料理人さんの休憩室?キッチンにつながってるんだからきっとそうだよね?じゃあ奥の扉は食堂か何か? 少し落ち着いてきた心に気合をいれる。 右側の扉が開くか確認しなきゃ! 「絵里!裕子!あの扉が開くなら、一気に走って逃げよう!」 二人が大きくうなずいた。 私は、早足で扉まで近づき扉の前で立ち止まる。 深呼吸をしてその部屋の匂いを吸い込むとちょっと気持ちが悪くなった。 そんな後悔と共にそのどのドアノブを回した。 「あっ!ちゃんと開くよ!」 ドアノブが回り扉が開く。私は嬉しくて興奮しながら二人に振り返る。 そして私は、腐った死体のように顔や手が爛れている男に、二人が後ろから抱き寄せられるように捕まっているのを見てしまった。 私は、あまりの光景に大きな悲鳴を上げて意識を手放した。 ◆◇◆◇◆ ふわふわと雲にゆられるような感覚にゆだねる私。 でもその揺れも徐々に大きくなって……私は飛ばされ真っ逆さまに落ち、目の前がに黒いヘドロの海が見えた時には腐臭にまみれて沈んでいく。 私は悲鳴を上げながら意識を取り戻し、体を起こした。 「あっ、ここは……」 私は周りを見渡すと、先ほどのキッチンの中だった。相変わらずの匂い。そして私は思い出す。絵里と裕子が…… 私は立ち上がると、床にべったりと付いていた汚れが、自分の服にも付いていることに泣きたくなった。「もう!」誰もいないはずの部屋で一人、いらだちを声に出す。 まずはここを出て、大人たちの助けを呼ぼう。そう思って再び先ほどの階段の部屋を目指して先ほどの扉に向き直る。そしてドアノブを回す。 「あれ?なんで?」 その扉は、ドアノブがガチャガチャと回るものの、扉は開けることができなかった。押しても引いても開かない扉。 「なんで!なんでよ!」 体を使ってその扉をドンドンと体当たり。まったく動く気がしないその扉に、絶望を抱く。じゃあどうしたら……私は、ちらりとまだ開けていない方の扉を見る。 ゴクリと喉がなった。もうここしか……ないんだよね。 もう一つあるにはある。先ほど椅子があって女の子が座っていた部屋に戻る扉……そっちは、ないかな…… そして目線を開いたことのない扉に戻る。 震える足でその扉までたどり着くと一気にそのドアノブを回しドアを押す……開かない……。 閉じ込められたのかも……私は絶望を感じながら座り込む。 そのドアノブを回したまま座り込んだ私は、そのドアが少しだけ開く。 内開きだったようだ。 そんな出来事にも腹が立つ。 今度は慎重にそのドアを開き終え、中をそっと覗いていく。窓からの明かりでなんとか先が見えるほどの大きな部屋。きっと階段裏全てを使った部屋なのだろう。その部屋の左側は多数の窓、右側には二つ、扉があった。 あの階段横にあった扉がそうなんだよね…… 「あの扉なら開かも……いや、開かなきゃこまる!」 私は不安を感じながらも大きな部屋に入ると、一番近くにあるドアノブに手をかける。ひねれば簡単に回る……しかしそこはまたしても開かなかった。今度はちゃんと押したり引いたりしてみるも、一向に扉は動かない。 「どうして!どうしてどうして!お願い!もう私を帰して!」 絶叫にも近い大きな声で、いるであろうこの家の主に懇願する。 『直子ちゃんは私を置いて行くの?』 響くような声にビクリとする体。
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