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もどってくる。
嫌な予感がひしひしとしている。背中に冷たい汗を搔きながら、私はそっと体重計の上に乗った。素足に感じるひんやりとした感触。表示された数字は、前回測定した時より五キロも増えたものだった。
「サイアク……マジで太った」
思わずぼやいて、私はそれとなく体重のかけ方を変えてみたり、足をもう少し開いてみたいりなんてことをする。それでも結局、表示された数字が大きく変わることなどない。
五キロ太ってしまった。その現実は、どうあっても覆らないようだ。
「はああああああああ……」
体重計を降り、鏡の中の自分を見た。鏡の中では、風呂上りの紅潮した顔の自分が映っている。自宅なのでタオルも巻いてはいない。気になるのは自慢の大きな胸――ではなく、その下の腹。明らかにぷよっとしてきている、と感じたのは間違いではなかったようだ。
それから、顎。ちょっと増えただけなのに、顎の下もなんだか妙に脂肪がついてきたような。
「まずいよね、これ……」
なんとかして痩せなければいけない。
もうすぐ、遠距離恋愛している彼氏、大気との久しぶりのデートなのだ。こんなザマでは、きっとお気に入りのワンピースのホックが止まらない。そして、きっと嫌われてしまう。
『奈子ちゃん、本当に綺麗だよ。やせてて、すらっとしてて、すごく綺麗!』
彼の、恐らく悪意なんぞひとかけらもないであろう誉め言葉を思い出す。とにかく一週間後だ。一週間後までに、なんとか手を打たなければ。
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