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高校二年生の時。学校開催のミスコンで私は三位だった。優勝でも準優勝でもなく三位。むしろ、私のような派手な顔立ちでも何でもない、ちょっと胸とオシリが大きいだけの女がよくここまで残れたものだと思う。あれが、うちの学校でミスコンが開催された最後の年であった。確かに、今の時代に即したイベントではなく、反対意見も多かったことだろう。
三年生でリベンジすることはもうできない。しょんぼりしていた私に声をかけてくれたのが、当時運営委員をしていた同じ二年生の、神島大気であったのである。
背は高いけれど童顔で、純粋無垢を形にしたような性格の彼は。残念がっている私のところに来て、こう励ましてくれたのだった。
『僕は、三田さんに投票したよ』
『え、ほんと?優勝と準優勝の人、私なんかよりずっと美人だったじゃない』
『あの二人も綺麗だったし他にも綺麗な人はいたけど、僕は三田さんが一番だと思ったから。……僕の中では、優勝したのは三田さんだから』
真っ赤になりながら告げてくれた言葉。それで、私がどれほど励まされたか知れない。
がっかりしていた気持ちが、彼の一言で一気に上向いた。去年同じクラスだったが、あまり話したことのなかった大人しい少年。私は思い切って、じゃ、あと誘いをかけてみたのである。
『じゃあ、お疲れ様会、一緒にしてくれる?駅前のケーキ屋さん、一人で入るのはちょっと勇気がいるんだけど……』
きっと、前々から私に好意を持ってくれていたのだろう。彼は茹蛸のような顔で、ぶんぶんと首を縦に振ってくれた。そしてそれが、二人で付き合うきっかけとなったのだ。
残念ながら、近距離恋愛ができたのは高校時代まで。彼は東京の大学を目指すと前々から決めており、卒業と同時に上京してしまったのだ。愛知県と東京都。新幹線一本で行ける距離とはいえ、流石に毎日会えるほど近いわけではない。私にとっては十分、遠距離恋愛の範疇だった。
しかもお互い大学では精力的に活動する部活やサークルに入ってしまったことで、夏休みには会えずじまい。春休みにやっと、お互い時間が取れて久しぶりに彼がこっちに来られることになったというわけだ。
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