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 ***  デートは大成功だった。  お気に入りのワンピース――どころか、バーゲンで見つけた勝負ようのドレスがすっきりと入ったというのも大きいだろう。久しぶりに私に会った大気は目を丸くして、凄いね!と褒めてくれたのだった。 『どうしたの奈子ちゃん?痩せた?前から綺麗だと思ってたけど、ますます綺麗になったよね?』  私にとって、これ以上ない誉め言葉だ。デート中、ずっと浮かれっぱなしになってしまったのは言うまでもない。  彼との久しぶりのデートは、キラキラと輝いて終わった。最後にはきっちり、ホテルでお泊りデートまで済ませている。最高の夜をありがとう。そう言って、翌日の昼彼は再び東京に戻っていったのだった。来年は、もっとたくさん会えたらいいね、と言いながら。 「本当に、凄い効果の薬。何入ってんだろ、これ」  家に帰ったところで、私は再び送られてきた“トトキオン・X”の瓶を見たのだった。瓶の裏にはラベルが貼られており、何やら難しい横文字がずらずらと書かれていたものの、知識のない私にはなんのこっちゃわからないことばかりである。  この薬の不思議なところは、瓶に入った錠剤と――掌サイズの小さな真四角の木箱のセットであるということ。薬の説明書には、“この木箱が重要なアイテムとなっているので、絶対に捨てないで大事に保管してください”と書かれていた。何かお守りのようなものなのかもしれない。  郵送されてきた当初は、空っぽなのか手に取って振ってもなんの音もしなかった木箱。それが、今はほんの少しだけ重くなって、私が持つと中でころころと音がする。何か異物が入っているのは間違いないようだ。とはいえ、完全に接着剤でくっつけられてしまっているので、私の手ではこじ開けて中を見ることなど不可能なのだが。 ――ちょっと気味悪いなあ。なんかの呪術アイテムとかじゃないよね?  製薬会社も、まったく聞いたことのない社名。少し不気味だったが、私は瓶と木箱を直射日光を避け、棚の中にきちんと置いて保管することにしたのだった。  今のところ、体調に悪い変化はまったくない。そして、実際に一粒飲んだだけで綺麗に痩せられたのは事実。いざという時、心強いアイテムになってくれるのは確かだろう。  次のデートの時、また力を借りることになるかもしれない。とりあえず今は。 ――よし。今度は自分の力で痩せられるように……きちんと食事制限して、運動しないとね!計画立てるぞ、計画!  私はよし、と意気込んでスケジュール帳を開いた。そう、この時は確かに、自分の力で痩せるつもりがあったのだ。
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