鳴らないメトロノーム

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「驚いたな……」 会社のすぐそばにあるカフェで買ったラテは、もう汗をかいている。  尚弥(なおや)の視線は手元のスマホから離れなくなっていた。 作家「装像アイ」の3作目が大手小説投稿サイトの人気投票で5位にランクインしていたのだ。 本が売れなくなって久しい。 出版社の生き残り競争は激しさを増すばかりだった。 そこで尚弥の勤める出版社で試験的に導入したのがAI作家。 人間の作家を相手にするような人件費がかからず、締め切りを守ってもらえるかじりじりすることもない。  膨大な原稿を何度作らせてもタダ。 それを校閲にまわして少し手直しし、小説投稿サイトに載せて読者の反応を見る。 AIというのは伏せたままだ。
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