30人が本棚に入れています
本棚に追加
***
バレサン艦の艦首に立つボスは、エンドレス号に伝達役のボートが向かうのを見届けていた。
「あのオンボロ船がここまで来られるか、ひやひやしていたが、ようやくこの時が来た。マサーナが使う船室の準備は出来ているだろうな?」
脇に控えている水兵が「はい」と返事をするが、その背後からガルディクスが声を上げた。
「まだ喜ぶのは早いぞ。あの船にはラミウスが乗っている。俺は、奴らが抵抗するとにらんでいる」
「これだけ多くの艦船が並んでいるのに、抵抗するだと?」
「心配するな。そうなった場合はこの俺がひと暴れして、奴らを従えさせるさ」
自信に満ちた顔を見上げながら、ボスは鼻白んだ。
「もちろん、そうしてもらう。そのために、網を張るのはブブルアの目前でなければならないという、お前の主張を受け入れたのだ」
「前にも言ったが」と前置きし、ガルディクスは舷側に歩み寄りながら話しを続けた。
「俺が一番困るのは、ラミウスに海底に逃げられることだ。水に弱い俺の体では、追うことは難しいからな。だが、ブブルアへたどり着くという目的が目の前にあれば、それを放棄して逃げるなんてことはしない。奴はそういう竜だ」
遠くの波間に浮かぶエンドレス号を睨むガルディクスは、全身から熱を発しているようだった。同じものを見ながら、ボスはほくそ笑む。
「つまりは、降参しようが、抵抗しようが、我々の勝ちということだろう」
「ああ、世界の覇者になる心の準備をしておくといい」
「ぐはははは、そんなものはとっくに出来ている。いつでも歓迎だ」
ボスの笑い声はエンドレス号まで届きそうな勢いであった。
最初のコメントを投稿しよう!