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一斉にモンティに注目が集まると、「わしじゃない」と、帆柱の下にいるラミウスを指差した。
「ウミヘビにいい案が?」
「あいつはウミヘビじゃない、竜だ。そうだろ?」
モンティに流し目を向けられ、ラミウスは観念するように言った。
「ええ。確かに私は海竜です。いつから知っていたのですか?」
「海底にあった金を拾ってきた時じゃ。人間の宝を抱え込むなんて、いかにも竜がやりそうなことであろう?」
「ちょっと何言っているのかよく分かりませんが、ここを通り抜けられる方法は、私しかないでしょうね」
海上のボートから「いつまで待たせる、早くしろ」との声が聞こえて、マイルズが慌てて言う。
「うみりゅうでもウミヘビでもどっちでもいい、方法とやらを教えてくれ」
「説明するより、見た方が早いでしょう」
ラミウスは船首まで歩み寄った。不思議そうな顔をするマイルズの横に並ぶと、前方を見る。海上に浮かぶボートの上の男を見て「準備はいいですか?」と視線を投げかけるが、相手は睨み返すだけだ。ならば仕方ないと、右手を海上に向けて伸ばした。
平穏だった波間に大波が現れ、たちまち天に向けて突き上げていく。
「うわぁぁ……これって、幻じゃないよな?」
「何十年と海に生きているわしでも、こんな大きいのは初めて見るぞ」
大波は獲物に襲いかかるサメのように、まずは目の前のボートを飲み込んで、次にはバレサンや他国の艦船の横っ腹に突進していった。今にも転覆しそうなくらい横倒しになりながら、右と左に払い除けるように押し流されていく。
後には遮るもののない波間が広がっていた。そして、その先には手招きするかのように陸が待ち構えている。
それまで固まっていたマイルズがようやく口を動かした。
「あれだけの船が、あっと言う間に片付いちまった」
「ここを全速で進みます。帆は畳んでください、今は風の力は不要です」
「お、おう。おーい、お前たち、急いで畳帆だ」
それまで呆気にとられていた船乗りたちが我に返り、拳を掲げた。
「任しとけ!」
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