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睨み返すラミウスと上空を交互に見て、マイルズが言う。
「あんたら痴話喧嘩でもしてるのか?」
「違います。今まで話していませんでしたが、ガルディクスはずっと私をつけ狙っていたのです」
「なんだ、ストーカーか。びしっと言ってやった方がいいぞ」
「だから違うって言っているでしょ! そういう関係ではありません」
ラミウスはマイルズを見た後、甲板にいるマサーナを見た。船乗りたちに囲まれ無事でいるが、蒼白な顔で濡れた肩を震わせている。
再びガルディクスを仰ぎ見て、ラミウスは意を決したように叫んだ。
「理由が何であろうと、海上で好き勝手なことをするのは許しません。決着をつけましょう。今、そっちに行きます」
それを聞いてマイルズが声を上ずらせた。
「おい、まさかあの火まみれと勝負するっていうのか? いくらあんたのホームグラウンドであっても無理だろ」
「そう簡単には負けません。竜は人間の想像以上に強いのです」
「そうだとしても無理すんな。マサーナをブブルアに運んで、その後は海底に逃げろ。そうすれば戦わずに済むじゃないか」
おや、と言わんばかりにラミウスは片眉を上げた。
「この状況で、私のことを心配してくれているのですか」
「ああ、そうだよ。ここまで一緒に来たんだ、無事な方がいいと思うだろ」
「ありがたいですが、それだと私にとって不十分なのです。約束したでしょう?」
「ん? 約束?」
微笑むように頬を緩ませ、ラミウスは穏やかに言った。
「確かに言いましたよ。あなたたちが無事に港に着くよう、手助けをすると」
マイルズはラミウスと目を合わせたまま、数秒要した後、にこりと笑んだ。
「言ったっけ、そんなこと?」
「そういう反応だと思っていましたよ」
力を抜くようにふっと息を吐いた後、ラミウスは続けた。
「とにかく、私がガルディクスを引きつけている間、手回しスクリューで港まで行ってください。いいですね、船長?」
「船長? あんたがそう呼ぶのは珍しいな」
そこまで言って、マイルズは言葉の意味を理解した。
「ああ、この船の連中のことは、オレが何とかする」
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