四竜の集結

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四竜の集結

 二体の竜は海面上で咆哮をあげていた。  巻き付いたラミウスの体を引き剥がそうとしながら、ガルディクスが叫んだ。 「お前、何のためにこんなことをしているんだ!」 「あなたに間違いを認めさせるためです」 「俺のどこが間違っていると言うんだ?」 「人間同士が争い合っているからと言って、私たちが彼らの命を奪ってもいいとはならないのです」 「人間は海を汚すだろう? 海を住処(すみか)にするお前にとって害も同然じゃないか。なぜ味方する?」  ラミウスも少し前まで同じ考えであったことを思い出す。言われた言葉に苦々しさを感じながらも、マサーナやマイルズを思う。 「人間だって色々いる。あそこにいる人間たちは、種の違う私を助けようとした。同族のあなたが私にしたことを思えば、こうなるのは必然だと分かるはずです」 「そうか、必然か。それならこっちも容赦なくやらせてもらう」  ガルディクスはまとっている炎を増強させ、体をマグマ並に熱した。ラミウスの体から一気に水分が抜けていき、表皮からもうもうと白煙があがる。身を絞られるような苦しさが押し寄せ、金属がこすれるような高音の悲鳴を上げた。 「あんな奴らのために苦しむことはないだろう? さあ、早く降参しろ」 「……そのセリフはそっくりそのまま、あなたに返しますよ」 「強がるな。いくらお前でも、このまま俺の炎を受け続けたら再起不能になるぞ」 「何を言うのです、忘れてもらっては困ります」  ラミウスは首を伸ばした。鎌首をもたげる蛇のように、ガルディクスの顔の前で睨む。 「ここが海の上であるってことをね!」  その直後、ガルディクスの翼の付け根に思い切り噛み付いた。低い悲鳴が上った瞬間、揚力が落ちる。そのすきを狙って、ラミウスは渾身の力をふりしぼって下方へと引っ張り込んだ。  ガルディクスの巨体を抱えたまま、ラミウスは大きな水しぶきを上げて海中へと落下した。全身から力が抜けていくのを感じながら、声にならない声を上げる。  マイルズ、後はあなたに頼みますよ……!
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