四竜の集結

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 泳いでいると、マサーナの思いつめた声が聞こえてくる。 「わたしのために、あなた方が犠牲になってしまって……」  マイルズは首をひねってマサーナをちらりと見る。蒼白な顔に向けて笑顔を見せた。 「犠牲なんて、これっぽっちも思っちゃいないさ」  高揚した気持ちがそうさせるのか、素直な気持ちが口をついて出た。   「長年貨物船に乗っていたのに、今まで気付かなかったんだ。荷物は後で運び直せても、人はそうじゃない。それを教えてくれたのは王女さま、あんただ。だから、最後まで届けさせてくれ」 「船長……」    照れくさくなったマイルズは前に向き直った。  マサーナの目から涙が流れ出る。その涙が海面にこぼれ落ちた時、胸元から何かが飛び出した。マサーナの手の上にのって「泣かないで」と言うそれは、青緑色の小人だった。 「よ、妖精さん? もしかして、宝の中から……?」 「うん。あの球体はおいらだよ。でも妖精じゃないんだ。ウィンドルって言うの。風竜さ」 「かぜりゅう……あの、貝の瓶詰めの時もお会いしましたよね?」    近くで見ると少年のようなあどけない顔をしている。ウィンドルは腰に手を当ててまくしたてた。 「うん、会ったよ。なるべく姿を見せちゃいけないって決まりがあるから、そうしてきたんだけどね。君が悲しむもんだから、おいら、いてもたってもいられなくなって、出てきちゃったよ。一体全体、なぜ泣いているんだい?」 「それは、わたしがブブルアに行きたいとお願いしたために、みなさんを危険に巻き込んでしまったから……」 「ブブルアって、あそこだよね?」  ウィンドルは陸の方を指差した。マサーナは「はい」と返事をする。  背後でぶつぶつと喋る声を訝しり、マイルズが振り返った。  するとウィンドルは跳躍し、上空でひと回転する。驚きで瞬いた後には姿が変わっていた。  小人だったものは巨大な羽を持つコウモリになり、草色をしていた――風竜の真の姿である。
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