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二体の竜が沈んだ場所の真上まで飛んできたウィンドルは、海に向けて大きく羽ばたき続けた。すると海面がへこみ、やがて海底が見えるほどに海水が周囲に押しやられた。
海底でとぐろを巻いていたラミウスと、その中央に座り込むガルディクスが露わになる。炎の消えたガルディクスは翼の生えたツノトカゲのようで、寒さに震えていた。
ラミウスが頭をもたげてウィンドルを睨む。
「何の用ですか」
「うん、もう、そのくらいにしてあげてもいいんじゃないかと思うんだよ」
「まだガルディクスの降参を聞いていません」
「そうなの? もう暴れる元気なんてないよね、ガル?」
「ふん……!」
ガルディクスは鼻息を吹いて顔をそらした。ウィンドルがため息をつく。
「せっかく久しぶりに会ったんだから、仲良くやろうよ。ラミは怒ると怖いって分かったでしょ? だからね、早く降参しちゃいなよ」
「……」
なおも黙り続けるガルディクスに、ラミウスはささやいた。
「そのうち体が冷え切って、そこらの岩と同じように動かなくなるのですよ。それでもいいのですか」
「お、俺が動けなくなってもいいって言うのか? 本気じゃないだろう? ラミウス、お前はそんな冷たい竜じゃなかったよな?」
「水温が三度しかない海底に住んでいますから」
「くっ……分かった、分かったよ。降参する。降参すればいいんだろう」
半ばやけになりながらの宣言であったが、ラミウスは巻き付いていた体を緩めた。ガルディクスは翼を動かし、ゆっくりと上昇する。そこへ、別の声が飛んできた。
「みんな、こんなところで何をしているの……?」
「えっ!」
カメレオンに羽が付いた姿のアッディアが、宙に浮きながら不思議そうに三体を見ていた。
「アデ、何でここにいるの?」
「向こうの空からみんなが騒いでいるのが見えてね、何をしているのか気になって、眠れなくなっちゃったんだ。だから、来てみた」
「いけません、ここへ集まったら、大変なことに……!」
ラミウスが言い終えないうちに、四体の竜の体が光り始めた。
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