願いが叶うとき

2/6
前へ
/82ページ
次へ
***  四体の竜は海上に浮き、円を描くように向き合っていた。自分の力で光を抑えられず、騒然とする。 「もしかして、この光っている間って、願いを叶えられるんじゃない?」    アッディアが言うと、ガルディクスが意気揚々と反応した。 「それなら、ボスが言っていた世界征服とやらを叶えられるぞ」 「待ってください、これは今後に大きく関わる重要なことです。未来に望みが持てるようにしなくてはなりません」    ラミウスが他の三体を鋭く見回すと、順に意見を言い合った。 「ぼく、今まで通りがいいな。城の寝心地より、やっぱり森の中がいいもの」 「うん、ラミの言うとおりだ。おいらナノ国の風が気に入っているんだ。あそこにいい風が吹かなくなるなんてことになったら困るよ」 「……」    黙っているガルディクスを見て、ラミウスは念押しをする。 「ガルディクス、あなたは降参したはずです。私たちの意思に従ってもらいます」 「ああ、分かったよ、従うさ。だが、どうすればいいんだ?」    ラミウスは辺りを見渡した。ブブルアの岸壁で祈るマサーナとマイルズの姿が見える。耳を澄ませば、祈る声が聞こえてきた。 「あの望みを叶えましょう。誰もが無事に帰る、という望みです」    竜たちは目で肯定の意思を示し、順に願った。 「みんなが無事に帰れますように」 「おっけー。みんな帰れるよ、もちろん無事にね」 「……さっさと無事に帰れ」 「みなが無事に帰途につく、そして、そのために必要なことをもうひとつ――」    ラミウスは、最後に一つ付け足して願った。
/82ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30人が本棚に入れています
本棚に追加