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「あなた方が来る少し前に、バレサン国から急ぎの使いが参ったのです。その伝令は王直々の使いで、ナノ国への行為への謝罪と、ボス・ポロラレス逮捕の依頼を携えていたのです」
「謝罪と逮捕だって? 一体どういうことだ?」
「ナノ国への行為は全てボスに騙された故の行動であったこと、平和を望むとのことでした。すでにナノ国から兵を引き上げ、王と王妃は無事解放されたとのことです。今後は友好を望むとのことで、バレサン国王の謝罪は本心であるとみて間違いないでしょう」
デインはマサーナを見て、にこりと微笑む。
「もう心配いりません。いつでも故郷へ帰れますよ、マサーナ王女」
「はい」とマサーナは元気よく返事をした。感極まったのか、その目が再び潤んでいる。
「何と言ったらよいか、感謝の言葉もありません」
「いえ、正しいことがなされただけです。天のお力でしょう」
二人の会話が途切れたところで、マイルズは頼み込むようにデインに言った。
「めでたいついでに、頼んでいいかな? オレたちの帰途の目処が立ってないんだ。どうにかならないか」
デインは少しも嫌な顔をせず、穏やかに返した。
「船は元通りに修復します。帰路の航海も、問題ないように手配しましょう」
「おお、そいつは助かる。これでみんな無事に家に帰れるってわけだ」
マイルズは言った後、小首を傾げた。
「何か、忘れていることがある気がするんだが……」
胸元にさげた国宝の球体を握りしめ、心からの笑顔を浮かべるマサーナを見て、気のせいか、と表情を緩めた。
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