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「続編? その本は話の続きがあるのですか?」
「ああ。こないだテイムに戻った時に買ったんだ」
「今、持っていますか?」
「あ、ああ。船長室に置いてあるけど……?」
顔をこわばらせ、ラミウスはマイルズに歩み寄った。
「それ、読ませてください」
「えっ?」
「もう読んだのなら構わないでしょう? 読ませてください」
さらに詰め寄ったラミウスは、マイルズに顔を近づけて金色の目を光らせた。
「ちょっと待ってくれ、そもそもあんたは誰だ? どうしてオレの船に乗っているんだよ?」
「私の名前を知っていたでしょう。それで十分ではありませんか」
「ううむ……確かに、名前は知っていたが……」
「それに、私が乗っていれば無事に港へ着けますよ」
「ふうむ。そいつはいいな。だが、何者か分からんやつを乗せるのは……」
ラミウスの全身を眺めるうち、マイルズの考えは徐々に変わっていった。
「なんだか不思議と乗せてていいような気がしてきたぞ」
海上から「おうい」と声がして、舷側に寄って身を乗り出した。
いつの間にかヨットが並走していた。その帆の向きを手繰るのは、赤い髪をなびかせた人姿のガルディクスだ。マイルズたちを見て手を振る。
「これからはあちこちの山々を巡ることにしたよ。ひとっ飛びせず、足を使っての移動だ。旅ってやつさ」
そう言いながら笑顔を見せた。
「いいですね」とでも言うように、ラミウスは手を上げて応える。
横で見ていたマイルズが口を開きかけた時、ラミウスは先んじて言った。
「言っておきますが、彼氏じゃありませんよ」
「うん? ああ……」
顔に疑問を浮かべたまま腕組みをするマイルズをその場に残し、ラミウスはさっさと船長室へ向かう。
その背を見つめていたマイルズは叫んだ。
「あっ、思い出したぞ。あんたは――」
エンドレス号は今日も無事に航海を続けていく。
―完―
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