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「今週、俺たちの勤務が合わないよね」
「週末、会えるよ?」
「週末だけだよ。寂しくない?」
鳴海くんが少し不満そうに言った。
「職場でも元気な顔を見られるから安心だよ」
私たちはほぼ毎日、職場で会っているので寂しさなんてなかった。鳴海くんの元気な姿も確認できるしね。だけど鳴海くんは不服な顔をして足を止めた。
「そういうことじゃなくてさ」
そう言ってむくれた。
「私はものすごく幸せだもの。これ以上は欲張れないよ」
「萌奈は欲がなさすぎ」
「そうかな?」
私は鳴海くんと付き合えただけでも十分なんだと思っている。
「俺の家に引っ越しておいでよ」
「…え?」
私は鳴海くんの突然の提案に目を開いて驚いた。だってそれって『同棲』ってやつだよね? それを提案してくれることはとても嬉しい。でも突然すぎて私は返事ができない。そんな私をみて鳴海くんが小首を傾げて言ってくる。
「これ欲張りじゃない。手が届く幸せだよ」
『手が届く幸せ』なんて鳴海くんのすごい持論が心に響いた。私も手を伸ばして幸せをつかみ取っていいんだって嬉しくなった。
「…うん。ではお世話になります…」
私の返事を聞いて鳴海くんの表情が柔らかく崩れた。
「よしっ、決まりな!」
そういっていつものあの笑顔を私にくれた。あのころと変わらないその笑顔。私は安心するしこれからもあなたの側でその笑顔を見ることが出来るんだって嬉しくてたまらない。
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