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私は静かに心の中で大絶叫した。
ここで鳴海くんが私に肌掛けをかけ直そうとしてくれた。しかしその時、鳴海くんの温かい手が私の二の腕に触れてしまった。ありえない事態に私の知覚が敏感になっており、まるで電流が走ったかのようにビクンと反応してしまった。
「あれ、藤川、起きているの?」
鳴海くんが普通に声をかけてきた。
私は恥ずかしさと混乱でパニックになり、すくっと起き上がり掛物で前を隠しながら壁に背を付け鳴海くんに向かい合った。
「ど、どうしてっ鳴海くんがベッドに?」
「だって、藤川もベッド使っていいよって言ったら、普通に返事していたし、いいのかなと思って…」
あれは言い間違いではなかったらしい。
言葉のまま、一緒にベッドをシェアするという意味だった。よくよく考えれば、医学部にストレートで合格する秀才が副助詞を間違えるわけがない。
「でっ、でもほかに部屋があるんだよね?」
「あるよ。筋トレルームと医学教材と資料で埋め尽くされている部屋がね」
「あ…」
ということは、今日はここで一緒に寝るしかないってこと?
私は先ほどサイドテーブルに置いた自分の衣服を恨めしく見つめた。気遣いで脱いでしまったことを猛烈に後悔した。
「やっぱり私…悪いからリビングで寝るよ」
「…気にならないけど?」
気にならない、それはそれで少し傷つくけど、そんなこと言っている場合ではなかった。鳴海くんは横向きで頭の下に腕を入れてこちらを見ていた。だからベッドから降りるには鳴海くんを乗り越えないといけない。
ショーツ姿…なのよね…
すでにプライベートゾーンは披露した仲だけど、この場面で下着姿をさらけ出すのだけは絶対にしたくない。だってヤル気満々みたいじゃないのっ。
「あの…ごめん。ベッドから下りたいから、どけてくれると有難い」
「乗り越えていいよ」
「え?」
その返答にものすごい戸惑ったけど、こうなったらもう仕方がない。ショーツが見えないように乗り越えるしかない。
またぐだけなのに、目の前の鳴海くんがヒマラヤ山脈級の高山に感じてしまう。
だ、大丈夫。ひょいって移動するだけっ
下だけは見られないようにしないと…
肌掛けで上手く下半身を隠しながら、せーので鳴海くんを乗り越えようと大股を開いた。
よしっ、って、えええ??
なぜこのタイミングでそんなことをしたのか。
私が乗り越えようと膝を付いて大股を開くと同時に、鳴海くんが仰向けの姿勢になってしまった。鳴海くんを踏みつけそうになり、私は咄嗟に腰を引いてしまった。そして、ストンっと腰がその場に落ちた。
それは見事な騎乗の体位になってしまった。
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