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それから私はぐっすりと眠れま……せんでした。
眠れるわけがなかった。神経だけが高ぶってしまい、気が付けば朝日を眺めるはめになってしまった。チュンチュンという可愛い鳥のさえずりが私の心を癒してくれる。
好きだった人と直接触れ合ってしまったんだ。これで興奮するなというほうが難しい。もちろん鳴海くんはあれからこのベッドに来ることはなかった。
鳴海くんは眠れたのかな…
ベッドサイドの時計を確認すると六時過ぎであった。
起きよう。そして鳴海くんに謝ろう
私はようやくむくりと起き上がると、身支度を整えてリビングへと出て行った。信じられないけど我聞はまだ気持ちよく眠っていた。
そこに鳴海くんが入って来た。
イギリスブランドのネイビーのポロシャツにホワイトのトラウザーという服装。スタイリッシュをラフに着こなしている。あまりにも似合いすぎていて、そのままポロの試合に出場できるレベルだと思った。
「おはよう。もう起きたの?」
いつも通りの爽やかな鳴海くんだった。
「おはよう。あの、昨日は…ごめんなさい。鳴海くんは眠れた?」
「仕事して、そのままその部屋で寝てたよ」
どうやら昨晩は普通に眠れたみたいだ。安心と同時に少し複雑な気持ちになった。
「そう…。よかった」
「藤川、コーヒー飲む?」
私はコクリと頷いた。鳴海くんは手際よくコーヒーメーカにポーションを入れてソーサーを食器棚から取り出した。抽出している間、滴下するコーヒーを見ながら鳴海くんがクスリと笑ってこう言った。
「…昨日は俺たち、危なかったな」
「っ⁉」
私は言葉にならない声を出してしまう。
鳴海くんがそんなことを口にするなんてっ
昨晩のことを振り返るなんてっ
「なかなか刺激的な…夜だった」
そう言ってコーヒーが抽出され終わったソーサーを手渡してくれた。私は何とも言えなくて、ただ赤面で受け取るしかできない。
「私、やらかしっぱなしで、もう鳴海くんに見せるものは何もないって気分…」
私が恥を覚悟でそういうと、鳴海くんは一瞬目を開いてから優しく微笑んだ。
「俺は藤川との距離がすごく近くなった気分」
そ、それは一体どういう意味でしょうか
と問いたくなる。でもきっと中学生の時と一緒。ここで意味を間違えるとあの時と同じ、二の舞になってしまう。だから額面通りに受け取ればいい。
「…うん、そうだね」
そう感じたから、私も自然に笑みがこぼれたんだ。
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