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身支度を整えて診察室に移動しようと鞄を手に取ろうとした時、ふと自分の手のひらを見ると汗をびっしょりかいているのに気が付いた。
私はハンカチを握り汗を拭きとる。
やっぱりすっごい緊張していたんだ
うん、現場の看護に生かせる貴重な体験ね
これで若い女性があの処置台で検査することへの羞恥心を共有することができた。この経験はきっと職場でも役に立つはずだ。
あとは医師の診察で検診は終了だ。
私は指示された通り診察室に入り、診察デスクの前にある椅子に腰を下ろした。
「先生、すぐ来るから待っててね。今日は検査の日でたくさん予約があるのよ」
ベリーショートの看護師を笑顔でそう言うと、また部屋から消えて行った。
信頼の厚いクリニックなら患者さんもたくさん来るので、多少待たされるのは仕方のないことだ。ふと壁を見上げると院長の写真と医師免許が飾られていた。生年月日が記載されており、私は何気なく院長の年齢を計算してみた。
…六十二歳?
診察してくれた医師の声は、若々しいボイスだったけど…
私が眉間にしわを寄せて壁を凝視してたら、続き通路から医師が入って来た。
「お待たせしました。藤川さんですね…」
その医師は手に持ったカルテに視線を落としたままやってきた。
当然私は、白髪まじりのおじさん医師が来ると思っていたから、その人が自分の視界に入ったとき、脳で情報を処理できずに思考がフリーズしてしまった。
ちょっと間して、それが誰なのかを認識した時、呼吸も止まった。
うそ…でしょう…?
だって、私のアソコを診察したのは鳴海蒼真
私の初恋の相手だったから
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