何度でも恋におちる

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途中、私たちは歴史のある薬王院に寄りご本尊に参拝した。鬼のような石階段が続いたけど、ゆっくり周りを見ながら一時間半ほどで集合場所の山頂についた。みな同じペースだったようで、ほぼそろっていた。今日は晴天で富士山も綺麗にみえ、その前でみんなで一緒に記念撮影をした。 ここでようやく森さんと山本さんが到着した。綺麗なロングウェーブヘアは乱れ、顔はひどく疲労し、靴のヘリに合わせて絆創膏が貼り付けられていた。  がんばって歩いてきたんだ!  諦めずに歩いた森さんはすごい! この根性は素直にすごいと思った。 「ランチを予約しています。『山小屋ハチ』の二階になりますー」 戸田さんからランチの案内があり、そのままみんなで移動することになった。 私がお手洗いで手を洗っていたら、横に立つ人がいた。顔をあげるとそれは森さんだった。 「鳴海先生の隣は私が座るから、絶対に邪魔しないでね」 組んだ腕のせいで胸が寄せ集まり、すごい圧を感じた。 「邪魔なんて、そんなつもりは…」 私がそう言いかけると、森さんが顔をグっと近づけてきて話を遮ぎった。 「いい子ぶらないでっ。私は鳴海先生と話ができていないじゃないの! あなたが隣を占領するからでしょう?」 「それは森さんが靴擦れをおこすから…」 と突っ込んでしまい、さらにギロっと睨まれてしまった。 「そもそも、市川主任に他の職員と交流を持てと言われて参加したのよね?だったら他の人とも交流してきなさいよ」 たしかにこれは森さんの言う通り、と納得してしまった。 私、本日、鳴海くんとしか会話をしていない。 「私が鳴海先生の隣。あなたは他に行ってっ」 「ええ…わかりました」 森さんの言い方は気持ちのよいものではないけれど、他の職員さんと交流を深めるいい機会だと思い、私はうなずくのだった。  
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