赤面の再会

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 ああ、大人になった鳴海くんも素敵だ… 見上げるほどの長身に、白衣が映える薄顔のイケメン。 なんといっても彼の魅力はナチュラルさだ。 サイドのボリュームは抑えたメンズショートはすっきりした印象だし、生活習慣が整ってるであろう綺麗な肌。 それを再認識して私の心臓はさらに落ち着かなくなった。 「ハンカチ、落としてたよ」 そんな彼が差し出した手には、先ほどまで私が握っていたハンカチがあった。 あまりにもショックな出来事に、握力を無くした私の手から落ちたらしい。 「あ、ありがとう…」 私は鳴海くんを直視できず手元にだけ視線を送り受け取った。 「なんかごめんな。同級生が診察するなんてさ…」 「ううん。鳴海くん…医師になったんだね」 「ここは叔父の病院なんだ。俺も手伝っていて」 「そうだったんだ…」  そうなのね…  ああ…知っていたら絶対に来なかったのに  アソコを披露せずにすんだのに… 後悔が先に立ち、私は押し黙ってしまった。 「そうだ。藤川に伝えたいことがあるんだ」 「え…なに?」 伝えたいこと、鳴海くんにそう言われて私はつい胸が騒いで顔を上げた。 そして鳴海くんは大まじめにこう言った。 「検診は経膣(けいちつ)エコーもしたほうがいい。卵巣とか子宮内部の様子も観察できるから」 経膣エコー。 それは棒状の細長い機械を膣に挿入し、子宮や卵巣を超音波で観察する検査。 刹那、鳴海くんが私の膣に棒を挿入している絵を想像する。 ますます赤くなる顔面を両手で覆いたくなった。  その検査を鳴海くんにされるの、  絶対に無理です… よくよく考えればこんな場面から甘い展開があるはずもなかった。 鳴海くんは最後まで医師だったってことだ。 私は火が噴きそうな顔を下げて呟く。 「知っているよ…。私、看護師だから…」 「看護師なんだ。うん、似合っているね!」 あの頃と同じような笑顔で私を見てくれる鳴海くん。 こそっと見上げて、その屈託ない笑顔がなつかしく思わず胸の奥がきゅんとなる。 と同時に、私はものすごく居たたまれなくなる。 「鳴海くん…ひとつ聞いてもいい?」 「なに?」 「なんで…鼻血が出ているの?」 先ほどはなかった鳴海くんの鼻に挿入されている綿球を、私はなんとも理解しがたい目で見てしまった。 「の、のぼせただけなんだっ。今日は検診で忙しくてっ。だからっ」 鳴海くんがなぜか焦るように弁明する。 いや、この際、鳴海くんが鼻血を出した理由なんてどうだっていい。 そんな衝撃以上に、私は何かを失ってしまった気がする。 片思いで終わった初恋の鳴海くんに、プライベートゾーンを披露してしまったことで。
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