113人が本棚に入れています
本棚に追加
12-9(夏樹視点)
18時半。
キッチンに入り、晩御飯の支度をしているところだ。ポテトサラダを皿に盛りつけた後、壁の時計を見た。そろそろ黒崎が帰ってくる時間だ。ロビーまで迎えに行きたいのに、今日は家で待ってくれと言われた。まだこのマンションに慣れていないからだ。
「アン。もうすぐでパパが帰ってくるよーー」
アンがフードを食べ終わり、ソファーへ寝転がりに行った。アンはすぐに新居に慣れたようだ。黒崎のおかげもあるだろう。
「……お風呂の準備よし。着替えも置いた。ご飯の準備は出来た。唐揚げは2度揚げする。お味噌汁、冷奴……。今朝の黒崎さん、かっこよかったな~。あ、ニュースが流れた!」
するとその時だ。テレビでニュースが流れ始めた。黒崎製菓の就任式典の話題が始まり、黒崎の姿が映し出された。あのコーディネートのスーツ姿で就任の挨拶をしている。そのかっこよさに、ため息が漏れた。
「仕事はどうだったかな?」
お茶を飲んでいると、着信音が鳴った。さっそく電話に出ると、低い声が耳元に届いた。以心伝心だろうか。黒崎のことを考えていたら、その彼から電話が掛かってきた。
「黒崎さん。待っていたよ!」
(……何かあったのか?)
「心配しないで。大丈夫だよ。電話をかけたくなっていたんだ」
(タクシーを降りた。これからロビーへ入る)
「下まで迎えに行くよ。待っていてね」
(部屋で待っておけ。すぐに帰る)
「早く会いたいもん。だめ?分かったよ~」
(……クルクル回ってやるから我慢しろ)
電話が切れた後、ソファーへ突っ伏した。あの遊びにつき合ってくれるのか。いっそう包容力が増した気がする。そう思って照れくさくなり、クッションで顔を隠した。
最初のコメントを投稿しよう!