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夕方、アンリとイリスは二人で城下町を歩いていた。
図書館から帰るイリスはちょうど帰宅途中のアンリと遭遇し、一緒に買い出しをして帰るところだった。
店が立ち並ぶ通りは見ているだけで楽しい。学生時代もこうやってアンリと並んで何度も歩いた。そんな日々を思いだして懐かしくなっていると、ウエディングドレスが飾ってある仕立て屋さんがあった。
大きなガラスの先に、清楚な白いドレスがある。細かい花の刺繍が美しい。
「きれいだね。」
イリスは気づかないうちにじっと見てしまっていたらしい。アンリが話しかけてきた。
「本当に。ウエディングドレスには憧れちゃうわ。」
「まさか結婚式でもドレスを着せてもらえなかったの?」
「ううん、結婚式を挙げていないのよ。」
ベルトラン家にひどい格好で挙式をさせられたと思ったのだろうか、アンリの言葉が鋭くなるので心配させないようにイリスは笑顔を作った。
「私の夫だった人は重い病気だったの。」
「えっ。」
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