お迎えは突然に

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お迎えは突然に

「しまったな」 大介は、リビングの机の上に出しっぱなしにされたケーキと、いつもより豪華な食事を見て途方にくれた。昨日は ゆいかの家でつい寝てしまった。 不倫相手の家で泊まり、 結局朝帰り。 しかも昨日は妻の誕生日だった。 LINE を 何度も送ってきたのはそういうわけか 無視した俺への当てつけで片付けはしない……か ちょっと気が緩んでたな、 気をつけよう 大介が、言い訳を考えようとした その時 「何で起こしてくれねえんだよ!!」 息子の翔が、すごい勢いで2階から降りてきた。 「あーもう8時じゃん。学校 間に合わねーって」 「お前が悪いんだろう。中学生 なんだから 自分で       起きろよ」 「父さんが それ言うなよ!自分だって酒飲んで、    帰ってこなかったくせに」 最近何かと言い返してくる 。これが反抗期か 「翔、昨日 夕食 食べたか?  母さんなんか言ってたか」 「知らね 。オレ、外で飯食ってきたし。母さんは    帰ったらいなかった。コンビニでも行ってたんじ  ゃね」 そう言い残すと、翔は慌てて玄関から出て行った。 大介はため息をつきながら 、卓上のケーキと食事をゴミ箱に捨てた。 一晩 出しっぱなしで古くなった 飯は、傷んで食えないよな。 無理に食ったら腹痛起こすかも そして 寝室の扉をそっと開ける。 横になっている妻の後ろ姿が見えた。 「優希、 昨日は悪かったよ 。遅くなったけど、  誕生日おめでとう」 返事はない。 「そんなに怒るなよ。抱えていた大きなプロジェク  ト、やっと終わったんだ。  お前だって一緒に仕事 してたんだから分かる  だろ。あの状況じゃ、打ち上げ抜け出すの   無理だって。」 ピクリとも動かない 。相当 機嫌悪いな 耳を澄ますと寝息が聞こえる。 寝てるのか……正直 ほっとした 大介は急いでシャワーを浴びて、 服を着替えた。 「俺もう会社行くけどさ、 お前は仕事休みなの?  今日はいつもの時間に帰るから、夜、どっか  飯食いに行こう。な?」 今回の喧嘩は長引きそうだ。 独り言を言いながら、車のエンジンをかけた大介は仕事に向かった。
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