お迎えは突然に

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「何が打ち上げよ 。あの 嘘つき」 車が走り去った後 、優希はベッドの上に起き上がった。 よくもあんな嘘 、平気でつけたもんね ああ、そうか 今まで帰りが遅い時は、全部不倫してたんだ 腹が立って仕方がないけど、それ以上に頭が痛い。 優希は、リビングに水を飲みに行く。 私、昨日どうやって帰ったっけ、えーっと… 割れるような頭で思い出す 。 そう 、イケメンとのキスシーンを…… あれ!あれって 夢 、現実 、どっち? 唇に妙にリアルな感触が残っているけど、 その後の意識がない。 でも家にいるって事は、全部夢だったのだろうか? 思考がまとまらない。そんな時 携帯が鳴った 知らない番号。 鳴り止まない 着信音。 私は 、思い切って電話に出ることにした。 「はい」 「あ 、並川優希さん、起きてました?」 知らない女性の声 。誰だろう… 「昨日お会いしたじゃないですか」 心がざわつく。 昨日あった女?誰もしかして不倫相手? わざわざ電話かけてきたの? 言葉を失う私とは対照的に、電話の女性の声は明るかった。 「昨日 、お家までお送りしましたよ。 カクテルのレッドアイ 、美味しかったですか?」 あ、 お店 『炎舞』にいた ママだ 一気に 力が抜ける。 「頭痛くありません? 調子悪いでしょ」 「はい 、死にそうです」 「今からお迎えに上がりますから。  そのまま着替えず、待ってて下さいね」 え!ちょっと待って。迎えって? 慌てる 私を置き去りに、電話は すぐ切れた。 あれ 夢じゃないの ?それとも、今も夢の中? そう思いたかった。 だけど、冷蔵庫の横のゴミ箱に捨てられた食事とケーキを見て、 私は全てが現実だと思い知る。 夫にとって私はゴミ同然。 愛なんて、とっくの昔に冷めていたかもしれない。 どれぐらい ぼんやりしていたのだろう。 優希がふと気づくと、外で救急車のサイレンが、 けたたましく鳴っている。 近所で 誰か倒れたのかな そう思っていると、玄関の扉が勢いよく開いた。 「並川さん !並川さん、大丈夫ですか⁉」 救急隊が2人 、猛烈な勢いで家の中に押しかけてきた。 「大丈夫ですよ。もう心配ないですからね」 いきなり担架に乗せられる。 「いやいや、ここじゃないです!   救急車、何かの間違いじゃ……」 慌てて否定すると、 「お待たせ〜」 帽子をずらして、見せてくれた顔。 なんと 演舞のママがいる。 「ああ‼ええ⁉」 驚く 私の耳元で、ママが囁いた 「このまま うずくまって、玄関出たら痛い痛いっ  て騒いで下さいね」 いたずらっぽく笑う ママを見て、この瞬間、 私は自分の心が悲鳴を上げているのが分かった。 そうか 、苦しかったら叫んでいいんだ 玄関を出た 。ここは 住宅街。 結構な人だかりができているが 私は 、力の限り 大きな声で叫んだ。 「痛いよ痛いよ 、助けてー!!」 心の中で、真っ赤な復讐という 炎が燃え上がるのを、私は確かに感じていた。
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