入院

2/2
前へ
/395ページ
次へ
「なんだ、この番号」 会議が終わり、 遅めの昼休憩に入っていた大介は携帯の着信履歴を見て眉をひそめた。 知らない番号の着信が大量に入っている。 心当たりがないな 考え込んでいると、部下の一人が血相を変えて会社の電話を持って 飛び込んできた。 「並川さん 、大変ですよ、 奥さんが……」 「はい 、並川ですが」 「翔君のお父さんですか。  私 クラス担任ですが学校の方に、お母さんが倒  れて、病院に救急搬送されたと連絡が入りました。  お父さんの携帯電話が繋がらなかったようです。  翔君は病院に向かうと言ってますが どうされ  ますか?」 優希が倒れた?この着信、病院か 大介は慌てて電話をかけ直した。 『恩返し法人  逢沢病院』到着 思ったより大きい病院だな 大介は駐車場に車を止めて足早に入り口に向かう。今朝の様子を思い返していた。 あいつ、もしかして 昨日から調子悪かったのか…… てっきり「 誕生日を祝ってくれない」と怒ってる のだと思い込んでた。いつから倒れてたんだ? LINE返信してすぐ? 入院病棟へ向かう。スタッフステーションに 並川の名を伝えると、 「医師からの説明があります。一旦お荷物を  ロッカーに預けて こちらからお入りください」 との指示を受けた。看護師に促されるまま部屋の扉を開けると、男性医師が振り向いた。 「こちらへお座りください。並川 優希さんの  ご主人ですか。僕は医師の逢沢 と言います。  本日、ご自宅から救急要請がかかり、奥様を搬送  致しました。激しい胸の痛みと吐き気、 腹痛を  訴えられていたので検査をしました。」 「あの、妻はどうして…」 「過労と虫垂炎の疑いがあります。  いわゆる 盲腸です」 「盲腸 ……なんだ、よかった……」 大介は 妻の無事を聞いて安堵した。 「すみません。 何度も ご主人に電話をかけたので  すが、繋がらなくて…息子さんに連絡しました」 「いえいえ、 僕も会議で出られなくてすいません  でした」 「驚きますよね。 突然 妻が入院したと聞くと。  症状は 安定しているので数日の入院で治ります。  入院に必要なものは 、看護師から説明を受けて  下さい」 「ありがとうございます」 それから 、若い男性スタッフが 「息子さんが病院に着いた」と連絡をくれて部屋まで連れてきてくれた。 大介が家に帰ると、すっかり 日が暮れていた。 あの後、病院まで駆けつけた 翔と一緒に妻を見舞い、一旦自宅に戻り 、必要な持ち物を再度病院に届けたあと帰宅したのだ。 「翔、飯食ったか?弁当買ってきたぞ」 返事はない 自分が昨夜、夕飯も食べず、母の様子も気にせず 学校に行ったことを悔やんでいるようだ 仕方ないよな  これは 大介も箸が止まる。 俺もゆいかのところにいたから 罪悪感を感じる。 でも 盲腸だ。それほど大したことはない。 帰ってきたら優しくしてやろう 大介は、気を取り直して風呂場に行く。洗濯物が山のように積んである。 そっか 、優希いないもんな 大きなため息をつきながら、 大介は洗濯機を回し始めた
/395ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1230人が本棚に入れています
本棚に追加