それぞれの言い分

2/3
1107人が本棚に入れています
本棚に追加
/296ページ
「信じらんない」 ゆいかは携帯を持ちながら、自分の部屋で文句を 言っていた。 月曜日、 大介さんは仕事を休んだ。 奥さんが入院したのは知っていた。 なんか思ったより大きな病気になっていた、と会社で今日初めて聞いた。看病が大変なのはわかるわ。 でも、ちょっとそっけないんじゃない? 「奥さんとは上手くいっていない。  何年もしていない。  もうすぐ離婚かも」 そう言ってくれたんだから、 わたしの方が大事なはず。 でも、大介さんの立場は分かってあげなきゃね 今は色々大変なのかな 携帯を置きながら、 ゆいかは 背伸びをした。 ま、落ち着いたら来るって言ってたし 今のうちに もっと可愛くなって、大介さんを びっくりさせよう 離婚したら、わたしと結婚よね 結婚式までは エステとクリニックに通わなきゃね ゆいか はそう自分に言い聞かせて、 鏡に向かって顔のマッサージを始めた。いつものように美しく、綺麗な自分でいるために。 翌日 美容の手術なんて大したことがないと軽く考えていた優希に天罰が下った。 痛い…… 頬に貼られたガーゼ 。 むくみ。赤く腫れ上がった腕や お腹。 「何これ! すぐに綺麗になるんじゃないの?」 「しばらく 『ダウンタイム』と言って症状の回復   を待つ時間が必要なんですよ。我慢して下さい」 高橋さんが、そう言いながらガーゼを張り替えてくれる。 美しくなるって、想像よりはるかに大変だ 私は 独身時代を思い出していた。 そういえば 大介と付き合っていた時は、結構 身だしなみや お化粧に気を配っていた。 結婚して出産してからは、毎日が忙しすぎて 美容を捨てていたのだと、優希は改めて気づいた。
/296ページ

最初のコメントを投稿しよう!