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家に帰ると、夕方時計は5時半を回っている。
しかし、一瞬でも期待した優希は後悔する。
もしかしたらサプライズで夫が帰ってきていて、
夕御飯でも用意してくれてるんじゃないかと。
息子が洗濯物を取り込んで感謝を示してくれるん
じゃないかと。
誰もいない、何一つ片付いていない家の中で、
私はため息をついた。
ついつい、自分用に3割引のケーキを買ってきたが、大きすぎて冷蔵庫にも入らない。
「あ〜も〜、しんどい‼」
結婚前の大介は
「今日は優希の大好物のトマトパスタだよ。
ピザもつけといた」
と、私の好きな物を優先してくれた夢のような日々を思い出す。
デートの時、よく行ったイタリアンのお店は、今はどうなったのだろう。
あの頃は結婚して数十年後に、
自分で作ったご飯で自分を祝う、なんて
想像できなかったわ!
そう思いながら、優希は鍋に湯を沸かし、いつも通りの食事の仕度を始めた。だが、あの時の私は、
今日の41才の誕生日が最高で最低の日になるなんて、まだ知らなかったのだ。
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