一億の女

最高で最低の日

「男は結婚する時、女が変わらないことを望む
　女は結婚する時、男が変わることを望む」

昼の休憩中、テレビから流れた声を聞いてパート仲間が騒ぎ出した。

「『お互いに失望することを避けることはできな
　い…』って何コレ?勝手なこと言う男ね」

「私、しってる〜!アインシュタインの言葉よ。
　ほら、ノーベル賞とった」

「へ〜、頭は良かったけど､夫としてはダメダメね｡
　何とか理論作ったのに、最低だわ」

「…相対性理論よ。あっ確かね、ノーベル賞の賞金
　離婚の慰謝料として奥さんに渡したらしいのよ」

「いくら？」

「１億５千万の半分、７千５百万円。」

「私なら、それもらえたら、すぐ離婚ＯＫだわ。」

どっ、と笑いが起こった。

「はいはい、もう昼休憩終わりですよ。皆さん、
　仕事して地道に稼いで下さいね。並川さん、
　会議の机、並べといてね！」

主任の声でいつもの仕事に戻った私だったが、しばらくぼんやり考えてしまった。