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この想いを胸に
夜、部屋の電気もつけずに私は、泣き腫らした目で青白い光の中、眠るスカイを見つめていた。
スカイの頬に触れると冷たかった。
今まで付いていた温感機能も作動していない…。
「スカイ…おとぎ話ではね、愛する人からのキスで奇跡が起きるんだよ…」
私は冷たいスカイの唇に、そっとキスをした。
また悲しみが溢れてきて、私はしゃくり上げながら泣いた。スカイとの思い出が次々と頭の中に浮かんできては胸が苦しくなった。
眠くはなかった。
だけど泣き疲れたのか、いつの間にかスカイの隣りで浅い眠りに落ちていた。
――夢の中。
あの美しいブーゲンビリアのトンネルの下で、私とスカイは笑って手を繋いで歩いた。
夢の中の私は、彼の優しい笑顔を見て「なんだ、夢だったんだ。スカイはこうして隣りにいるじゃない」と、現実に起きた事の方が夢だと思っていた。
降り注ぐようにブーゲンビリアの花びらが舞うと、私に笑顔を向ける彼の唇が動いた。
声は聞こえない。
私はその唇の動きを読んだ。
「愛 し て る」
そんな幸せな夢は、朝日が昇るのと共に消えていった。目が覚めてようやく現実に戻り、朝方に見ていた夢を丁寧になぞった。
「…幸せだったな」
私はいつものように大学へ行く支度をして、キッチンで気の進まない朝食をとりながらタブレットに目を通した。
ママやメリッサから私を心配する内容のメールが何通も届いていた。
「ありがとう、もう大丈夫」と返信をする。
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