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部屋に戻り、スカイがくれた最初で最後の手紙を折れないようファイルに綴り、そっと机の引き出しにしまった。
持ち歩いてしまうと、見るたびに泣いてしまうから…。
新しいアンドロイドは持たない事にした。
感情移入しやすい私は、女性やペットタイプにも情を注いでしまうと思ったし、何より別れがつらいから。
スカイの体もいずれは処分しないといけない。
でも、もう少しだけ一緒にいたい…。
寝ているスカイに視線を落とす。
「行ってくるね、スカイ」
自分にしか聞こえないような声で呟いた。
静かな部屋に虚しさだけが返ってくる。
部屋を出ようとした、その時だった。
――「アイリス」
スカイの声で呼ばれた気がした。
ハッとして後ろを振り返った…でもスカイは目を閉じ眠ったままだ。
「…気のせいかな。行ってきます」
私は玄関を出て、大学へと向かった。
彼との思い出は私の中でずっと消えない。
私は花畑で見た彼の微笑みを思い出していた。
あれも見間違いじゃなかったのかもしれない。
…奇跡が起きるなら、またスカイの優しい笑顔を見たいと思った。夢の中でもいい。
私がちゃんと前に進めるように――。
〜終わり〜
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