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第一章 私をすきにならないの⁉
わたしは目の前に立つ男子を、おどろきいっぱい、目を白黒させて見つめた。
「三条くん、なんで、わたしのこと好きにならないの……?」
メガネ男子・三条ソウマはロボットみたいに淡々とした声で言う。
「なんでと言われても、おれは恋愛なんて興味がない。それに――」
なにか続けられた言葉は、びっくりしたわたしには、もう聞こえていなかった。
三条くんは、すらっとしていて、ぱっと見イケメン。クラスの中で一番背が高い。でも、瞳も見えないくらい、ぶあついメガネをしている。
いかにもガリ勉って感じ。
学校の放課後。
わたしはそんな三条くんに呼び出された。
あ~、また男子から告白されちゃうのかぁ……。
とか思っていたら、三条くんは突然、わたしがかけていたメガネをうばったんだ。
あ、言い忘れてた。実はわたし、外出するときは、三条くんみたいに、ぶあついメガネをかけている。だって、わたしと目があうと、みーんな、わたしを好きになっちゃうんだもん。それはゼッタイのお決まりごと。
なのに!
「な、ん、で! 好きにならないわけ⁉」
三条くんの服の胸もとを、がしっとつかむ。
「わたし、かわいいでしょ! ふつう、好きになるじゃん⁉」
「そう言われても……。そんなことより、九重さん」
そんなことより⁉
「え、まって、わたしのかわいい顔より大事なこと、ある?」
「最近、おまじないをした覚えはあるか?」
「あれ、無視⁉ 三条くーん⁉ おーい!」
なんなの! 意味わかんない。
「……ていうか、おまじない? してないけど」
「いや、必ずしたはずだ。思い出せ」
がしっと、今度はわたしが肩をつかまれる。び、びっくりした。三条くん、背が高いから迫力あるんだよね……。
と、ランドセルに入れていたスマホが鳴った。こっそり確認すると、マネージャーからだ。はっとする。
「やっば、今日仕事だった!」
わたしは勢いよく三条くんの腕を振り払って、自分のメガネを取り返す。
「ごめんだけど、もう行くから! だけど、覚えときなさいよ、三条ソウマ……!」
ダサいメガネをかけると、教室を飛び出した。
夏空の下を、叫びながら駆け抜ける。
「わたしを好きにならないとか、ほんと、三条くん、わけわかんない!」
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