第四章 全力ダッシュで距離接近?

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第四章 全力ダッシュで距離接近?

 それから数日、わたしは三条くんをさけて過ごした。  マジモノっていうのは、本当にいるのかもしれない。わたしのこの瞳がおかしいってことも、本当はわかってる。だけど、みんなに好かれているのは、わたし自身の魅力のはずだ。 「エナちゃん、どうしかしたかい?」 「あ、いえ……、よろしくお願いしまーす!」  スタジオで明るいライトを浴びて、カメラだけに笑顔を向ける。だれかと目が合うと、面倒だから。見るのはカメラだけ。ポーズを変えて、表情も色々変えて、撮影は終わった。 「エナちゃん。今日はちょっとうわの空だね」  びくうっと肩が跳ねた。 「そ、そうですかねぇ……?」  いけない。お仕事はしっかりしないとなのに。わたしは、お母さんみたいな素敵なモデルになるんだから。  衣装を着替えるために、メイク室に向かう。そこには、はなのんがいた。 「はなの……」  声をかけようとして、はっとした。  はなのんは、大きな鏡を前に、ポーズの練習をしていた。何度も何度も鏡をチェックしながら、その衣装が一番かわいく見えるポーズを探してる。  モデルってね、もちろんモデル本人がかわいいのは大事。だけど、衣装をすてきに見せることも大切なお仕事だ。 (はなのん、努力してるんだね)  実は、はなのんは、この春に転校してきてから、モデルをはじめた。わたしに憧れて、モデルをしてみようって思ったんだって。この数か月で一気に人気が出てきた、すごい子なの。 「はなのん。がんばってるね」 「あ、エナちゃん。ありがとう!」  練習が終わったところで声をかけると、えへへ、とはなのんが照れくさそうに笑う。 「でもエナちゃんには追いつけないよ。人気投票、いまのところエナちゃんが一位だし」 「ん。でもはなのんも二位でしょ。すごいよ」  わたしたちの雑誌すまプリは、毎年夏に、モデルの人気投票をしている。わたしはここ数年ずっとトップ。だけど……。  頭に三条くんの言葉がよみがえる。ひとに好かれているのは、マジモノのおかげだ、って。 「一位も、マジモノのおかげってこと……?」 「え? なにか言った?」 「あ、ううん。なんでもないよ!」  不思議そうなはなのんに、わたしは笑顔を浮かべた。  もう、ここのところ、気分が落ち込んでばっかり。どうしてくれるのよ、三条ソウマ!
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