第四章 全力ダッシュで距離接近?

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 お風呂に入ってから、わたしは自分の部屋で宿題と格闘していた。  んー、算数嫌いだなあ。分数の計算とか、人生に役立つ? たし算とひき算できれば、なんとかなることない? 「めんどくさ~!」  わたしはえんぴつを放り出して、机に突っ伏した。ちらっとスマホが目に映る。三条くんなら、宿題も喜んでやってそうだな。真面目だし。 (そういえばわたし、三条くんにお礼言ってない)  この前、吉田くんに迫られていたときに、助けてくれたお礼、してないよね。気づいてしまうと、もう宿題どころじゃなかった。 『この前、マジモノの暴走から助けてくれて、ありがとう。感謝!』  ぴこん、とメッセージが飛んでいく音。しばらく待っていると、今度はメッセージを受け取る通知音がした。 『気にするな』  みじかっ!  そっけないなあ、三条くん。わたしは、ふふっと笑って、それから顔をひきしめる。 『わたし、ほんとにマジモノに取りつかれてるんだよね?』  それに対する返事は、通知音ではなく、着信音だった。 「え、電話⁉」  びっくりして、スマホを二度見する。三条くんからの、電話だ。おそるおそる、電話に出る。 「えっと、三条くん……?」 『ああ。エナさんは、確実にマジモ……いや、物の怪につかれている』 「あ、いま、マジモノって言おうとした」 『……してない。そんな軽い呼び名は使わん』 「いやいや、絶対言いかけたよね。素直に使いなよ~!」  三条くんは無言になった。きっと、スマホの向こうでは、むうっと眉を寄せているんだろうな。 「ってか、なんで電話?」 『文字を打つのが苦手なんだ。電話のほうが楽だろう』 「あはは、なにそれ!」  わたしが爆笑していると、また三条くんがむうっと黙る。  なんか、不思議だ。スマホ越しに、三条くんの声がわたしの耳元でする。三条くん、けっこう声もきれいなんだよね。イケボ。ダサいのは、あのメガネだけか……。 『物の怪を祓うには、本人の意志で、物の怪を切り離すことが必要だ』  三条くんが、低い声で言った。
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