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お風呂に入ってから、わたしは自分の部屋で宿題と格闘していた。
んー、算数嫌いだなあ。分数の計算とか、人生に役立つ? たし算とひき算できれば、なんとかなることない?
「めんどくさ~!」
わたしはえんぴつを放り出して、机に突っ伏した。ちらっとスマホが目に映る。三条くんなら、宿題も喜んでやってそうだな。真面目だし。
(そういえばわたし、三条くんにお礼言ってない)
この前、吉田くんに迫られていたときに、助けてくれたお礼、してないよね。気づいてしまうと、もう宿題どころじゃなかった。
『この前、マジモノの暴走から助けてくれて、ありがとう。感謝!』
ぴこん、とメッセージが飛んでいく音。しばらく待っていると、今度はメッセージを受け取る通知音がした。
『気にするな』
みじかっ!
そっけないなあ、三条くん。わたしは、ふふっと笑って、それから顔をひきしめる。
『わたし、ほんとにマジモノに取りつかれてるんだよね?』
それに対する返事は、通知音ではなく、着信音だった。
「え、電話⁉」
びっくりして、スマホを二度見する。三条くんからの、電話だ。おそるおそる、電話に出る。
「えっと、三条くん……?」
『ああ。エナさんは、確実にマジモ……いや、物の怪につかれている』
「あ、いま、マジモノって言おうとした」
『……してない。そんな軽い呼び名は使わん』
「いやいや、絶対言いかけたよね。素直に使いなよ~!」
三条くんは無言になった。きっと、スマホの向こうでは、むうっと眉を寄せているんだろうな。
「ってか、なんで電話?」
『文字を打つのが苦手なんだ。電話のほうが楽だろう』
「あはは、なにそれ!」
わたしが爆笑していると、また三条くんがむうっと黙る。
なんか、不思議だ。スマホ越しに、三条くんの声がわたしの耳元でする。三条くん、けっこう声もきれいなんだよね。イケボ。ダサいのは、あのメガネだけか……。
『物の怪を祓うには、本人の意志で、物の怪を切り離すことが必要だ』
三条くんが、低い声で言った。
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