第四章 全力ダッシュで距離接近?

5/5

18人が本棚に入れています
本棚に追加
/48ページ
「本人の意志……?」 『おれの術で手助けすることはできるが、最終的にはエナさんが、おまじないなんていらない、と思わなければ、マジモ……物の怪を祓えない』 「もうマジモノって呼びなよ」 『うるさい』  頑固だなあ。 「……でもさ、マジモノを祓ったら、どうなるの?」 『メガネをかけずに過ごせるようになるだろうな』  今度はわたしが黙り込んだ。  どれだけのひとが、マジモノの影響でわたしを好きになっているんだろう? 全員? はなのんとか、スタジオのひととか、ファンの子も?  そう思うと、きゅうっと胸が苦しくなった。 『……さん、エナさん! 聞いているか?』 「うわっ、うん、え、なに? 聞いてるよ」 『そうか。マジモノ……ああもういいか、マジモノを祓うためには、手順がいる』  お、ついに三条くんもマジモノって言い出した。やっと素直になったじゃん。 『まず、エナさんが使ったおまじないを知る必要がある。それから、おれが術を使って、マジモノを引きずり出す。あとは、エナさんの意志で断ち切る。これがお祓いの手順だ』 「おまじないを知る?」 『マジモノの正体を暴く、と思ってくれればいい。相手を知らないと、戦えない』  ふんふん、なるほど? 「面倒くさいね!」 『はっきり言うな』 「でもわたし、ほんとに、おまじないしてないんだけど」 『……そうか。では、調べてみる必要がありそうだな。それはそうとエナさん』 「なに?」 『宿題は終わったか?』  うぐっ。いやなこと、思い出させてくれるじゃん。わたしは顔が引きつるのを感じながら、スマホにすがった。 「三条くん~、ついでだから、宿題教えてくれない? 算数の計算わかんない!」 『……仕方ないな。どこの問題だ』 「問題一」 『最初からか』  呆れたような声の三条くんだけど、最後の問題を解き終えるまで、電話で教えてくれた。しかも、教え方めっちゃ上手なの! 三沢先生より、わかりやすい! 「やっぱメガネキャラは頭いいね!」 『エナさんもメガネをしているだろう』 「あれは、なんちゃってメガネだもん~」 『そうか。もう切るぞ。夜更かしは身体によくない』 「おかんか。言われなくても、すぐ寝るよ。寝不足だとかわいくなくなっちゃうもん」  お肌によくないし、クマができたら魅力激減。かわいくなりたいなら、夜はしっかり寝るべし! 「じゃ。おやすみ、三条くん」 『ああ、おやすみ』  ぷつっと切れる電話。  わたしはスマホを指でなぞりながら、ふふっと笑った。最近まで全然しゃべったことなかったクラスメイトに、「おやすみ」って言われるのは、ヘンな感じだったけど、悪くないかもしれない。
/48ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加