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「本人の意志……?」
『おれの術で手助けすることはできるが、最終的にはエナさんが、おまじないなんていらない、と思わなければ、マジモ……物の怪を祓えない』
「もうマジモノって呼びなよ」
『うるさい』
頑固だなあ。
「……でもさ、マジモノを祓ったら、どうなるの?」
『メガネをかけずに過ごせるようになるだろうな』
今度はわたしが黙り込んだ。
どれだけのひとが、マジモノの影響でわたしを好きになっているんだろう? 全員? はなのんとか、スタジオのひととか、ファンの子も?
そう思うと、きゅうっと胸が苦しくなった。
『……さん、エナさん! 聞いているか?』
「うわっ、うん、え、なに? 聞いてるよ」
『そうか。マジモノ……ああもういいか、マジモノを祓うためには、手順がいる』
お、ついに三条くんもマジモノって言い出した。やっと素直になったじゃん。
『まず、エナさんが使ったおまじないを知る必要がある。それから、おれが術を使って、マジモノを引きずり出す。あとは、エナさんの意志で断ち切る。これがお祓いの手順だ』
「おまじないを知る?」
『マジモノの正体を暴く、と思ってくれればいい。相手を知らないと、戦えない』
ふんふん、なるほど?
「面倒くさいね!」
『はっきり言うな』
「でもわたし、ほんとに、おまじないしてないんだけど」
『……そうか。では、調べてみる必要がありそうだな。それはそうとエナさん』
「なに?」
『宿題は終わったか?』
うぐっ。いやなこと、思い出させてくれるじゃん。わたしは顔が引きつるのを感じながら、スマホにすがった。
「三条くん~、ついでだから、宿題教えてくれない? 算数の計算わかんない!」
『……仕方ないな。どこの問題だ』
「問題一」
『最初からか』
呆れたような声の三条くんだけど、最後の問題を解き終えるまで、電話で教えてくれた。しかも、教え方めっちゃ上手なの! 三沢先生より、わかりやすい!
「やっぱメガネキャラは頭いいね!」
『エナさんもメガネをしているだろう』
「あれは、なんちゃってメガネだもん~」
『そうか。もう切るぞ。夜更かしは身体によくない』
「おかんか。言われなくても、すぐ寝るよ。寝不足だとかわいくなくなっちゃうもん」
お肌によくないし、クマができたら魅力激減。かわいくなりたいなら、夜はしっかり寝るべし!
「じゃ。おやすみ、三条くん」
『ああ、おやすみ』
ぷつっと切れる電話。
わたしはスマホを指でなぞりながら、ふふっと笑った。最近まで全然しゃべったことなかったクラスメイトに、「おやすみ」って言われるのは、ヘンな感じだったけど、悪くないかもしれない。
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