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第五章 メガネ・パニック!
ダンダンダン、とボールの音が体育館に響く。
「よっし、九重エナ、いきまーす!」
ドリブルしながら、バスケットコートを駆け抜ける。
「くっ、ダサいメガネしてるのに、はやい、だと……⁉」
「あんなダサいメガネなのに!」
「エナちゃん、かっこいい……!」
最後のはなのん以外のクラスメイト、覚えとけ! ダサいメガネだってねえ……、
「好きでしてるわけじゃないんだからーっ!」
叫びながら、ゴールに向かってシュート! ボールはすとん、とゴールをくぐった。ピピー、と笛の音が鳴って、わたしたちのチームが勝利!
体育の時間、男女合同のバスケットボールの試合をしていた。わたし、毎日走り込みしてることもあって、運動はけっこう得意なんだ。
「エナちゃん、おつかれさま!」
「ありがと、はなのん~!」
ぎゅっと、はなのんと抱きしめ合う。美少女ふたりのハグだ、みんな目の保養になるだろう!
……って言いたいけど、いまのわたしはダサいメガネをかけているから、映えないな。でもまあ、仕方ないよね。メガネはずすと、告白されちゃうし。
「お。あっちのメガネも、すげーじゃん」
男子の声に、わたしはとなりのコートを見る。三条くんがボールを放ったところだった。ボールはきれいな弧を描いて、ゴールに吸い込まれていく。
三条くんも運動得意なんだよね。わたしの走り込みにもついてきたくらいだし。
「ダサいメガネコンビ、やるなぁ!」
「もう、ダサいって言わないでよ~! わたし、素顔はかわいいからね!」
「でもメガネはダサいだろ」
「くっ、反論できない!」
男子にからかわれて、わたしはむっとする。それでも、目は三条くんを追っていた。やっぱ、背高いし、スタイルいい。三条くん、モデルもできちゃうんじゃないの。
そう思ったときだ。
「エナちゃん!」
「えっ?」
はなのんの叫び声がしたかと思うと、ガン、と頭が揺れた。
「いっ~~~たああああああ!」
あまりの衝撃に、一瞬視界が白くなって、わたしは倒れ込む。とんとん、と足もとにボールが転がる音がした。
「エナちゃん、大丈夫⁉」
「う、うん……、なんとか……」
どうやら、となりのコートから飛んできたボールが頭に当たったらしい。びっくりした。頭吹っ飛ぶかと思った。
「ごめん、九重さん! 大丈夫⁉ 怪我してない⁉」
わっとみんなが集まってくる。
「あー、大丈夫。ちょっとくらっとしただけ」
いたた、と額をおさえたところで、わたしははっとした。
「メガネ……!」
メガネがない。
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