第五章 メガネ・パニック!

1/3

18人が本棚に入れています
本棚に追加
/48ページ

第五章 メガネ・パニック!

 ダンダンダン、とボールの音が体育館に響く。 「よっし、九重(ここのえ)エナ、いきまーす!」  ドリブルしながら、バスケットコートを駆け抜ける。 「くっ、ダサいメガネしてるのに、はやい、だと……⁉」 「あんなダサいメガネなのに!」 「エナちゃん、かっこいい……!」  最後のはなのん以外のクラスメイト、覚えとけ! ダサいメガネだってねえ……、 「好きでしてるわけじゃないんだからーっ!」  叫びながら、ゴールに向かってシュート! ボールはすとん、とゴールをくぐった。ピピー、と笛の音が鳴って、わたしたちのチームが勝利!  体育の時間、男女合同のバスケットボールの試合をしていた。わたし、毎日走り込みしてることもあって、運動はけっこう得意なんだ。 「エナちゃん、おつかれさま!」 「ありがと、はなのん~!」  ぎゅっと、はなのんと抱きしめ合う。美少女ふたりのハグだ、みんな目の保養になるだろう!  ……って言いたいけど、いまのわたしはダサいメガネをかけているから、映えないな。でもまあ、仕方ないよね。メガネはずすと、告白されちゃうし。 「お。あっちのメガネも、すげーじゃん」  男子の声に、わたしはとなりのコートを見る。三条くんがボールを放ったところだった。ボールはきれいな弧を描いて、ゴールに吸い込まれていく。  三条くんも運動得意なんだよね。わたしの走り込みにもついてきたくらいだし。 「ダサいメガネコンビ、やるなぁ!」 「もう、ダサいって言わないでよ~! わたし、素顔はかわいいからね!」 「でもメガネはダサいだろ」 「くっ、反論できない!」  男子にからかわれて、わたしはむっとする。それでも、目は三条くんを追っていた。やっぱ、背高いし、スタイルいい。三条くん、モデルもできちゃうんじゃないの。  そう思ったときだ。 「エナちゃん!」 「えっ?」  はなのんの叫び声がしたかと思うと、ガン、と頭が揺れた。 「いっ~~~たああああああ!」  あまりの衝撃に、一瞬視界が白くなって、わたしは倒れ込む。とんとん、と足もとにボールが転がる音がした。 「エナちゃん、大丈夫⁉」 「う、うん……、なんとか……」  どうやら、となりのコートから飛んできたボールが頭に当たったらしい。びっくりした。頭吹っ飛ぶかと思った。 「ごめん、九重さん! 大丈夫⁉ 怪我してない⁉」  わっとみんなが集まってくる。 「あー、大丈夫。ちょっとくらっとしただけ」  いたた、と額をおさえたところで、わたしははっとした。 「メガネ……!」  メガネがない。
/48ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加