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第六章 下校・パニック!
「帰ろ、三条くん」
どうにかこうにか一日を乗り切って、あとは帰るだけになった。もー、今日ほど疲れた日ってないよ。家帰ったら、お菓子いっぱい食べちゃお。
でも帰る前に、また、ひと騒動が起きちゃうみたいだ。
「ああああ、ちょ、三条くん、あぶない!」
「うわっ」
「ほらもう! 気をつけてよ!」
わたしはひやひやしながら道を歩く。だって三条くん、めちゃくちゃ転びそうなんだもん! 見えないから、歩くのもひと苦労みたい。だからって、見てるこっちも怖いわ!
(あ、待って。いいこと思いついた!)
「もー、仕方ないなあ!」
わたしはため息をついて、三条くんの手を握る。
「家まで送ってあげる!」
ぐいっと三条くんの手を引きながら、歩き出す。三条くんのために仕方なくだぞ、と装いながら、内心、にやっと笑った。
どうだ、美少女と手をつなぐシチュエーション! 照れない人間はいないだろう! さすがの三条くんでも、これにはドキッとするはず――。
「む。すまないエナさん。助かる」
ドキッと……していない⁉
三条くんはなんでもないみたいな顔でついてきた。なんで? なんでそんな無反応⁉ わたし、かわいいよね? かわいいでしょ? なんで?
「どうした、エナさん」
「……いや、もう……なんでもないデス……」
そういえば、これまでも三条くんに腕をひかれて空き教室に連れていかれてたわ……。手ごわいぞ、三条ソウマ。わたしのかわいさが効かないなんて。
ちーん。
落ち込んだわたしは、とぼとぼ三条くんのとなりを歩く。
だけど、ふっと、暗い気持ちが湧いた。
(……これが、ふつうの反応だったりするのかな)
三条くんに、おまじないの力は通用しない。もしかしたら、三条くんがふつうで、わたしをかわいいって言ってくれてるみんなが、おかしい……?
そんなこと、ないよね。わたしは、モデルだもん。母さんゆずりのかわいさがあるんだから。
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