第六章 下校・パニック!

2/6

18人が本棚に入れています
本棚に追加
/48ページ
「エナさん? どうかしたか?」 「……ううん」  首をふると、三条くんはぐっと顔を近づけてきた。 「なにか悩みがあるなら、聞くぞ」 (わ、やっぱり、きれいな顔だ)  近づいた真っ黒の瞳は澄んでいて、本当にわたしのこと心配してるんだって伝わってくる。三条くん、いろいろ失礼だけど、優しいのは間違いないんだよね。 「……ありがと。でもまあ、どっちかと言えば、三条くんが悩みの種かなあ~」 「な、なに? おれはエナさんに、なにかしてしまっただろうか……?」  おそるおそる聞いてくる三条くんに、わたしはくすっと笑う。 「そりゃあもう、なんかいろいろされたよ。ひどいなあ、三条くん」 「そ、それはすまない!」  わたわたとあわてる三条くんを見ながら、わたしは手を離して小走りになる。 「三条くん、ちょっとそこで待ってて!」 「え?」  急いでお店に駆け込んで、すぐまた三条くんのところに戻る。 「はい。メガネありがと! 今日は助かったよ!」  三条くんのメガネをはずして、渡す。三条くんは戸惑いながらメガネをかけた。イケメンな顔がダサいメガネに隠れちゃうのはもったいないけど、まあ、仕方ないね。  わたしは百円ショップで買ってきた色付きのサングラスをかけて、ニッと笑った。 「ど? サングラスも似合うでしょ?」  これならひとと目も合わないし、問題なし。だけど三条くんは眉を寄せた。 「帰り道にお店に寄るのは校則違反だぞ」 「かたいこと言わないでよ、真面目だなあ」  ぶう、と口をとがらせる。 「しょうがないじゃん、今日ばっかりはさ」 「……エナさん」 「なに?」  わたしは振り返る。三条くんは、じっとわたしを見ていた。 「はやくマジモノを祓ったほうがいい。こんな生活は、エナさんも困るだろう」 「……ん、そだね」  あいまいに返して、歩き出す。そりゃ、みんなと目が合わないようにするのは大変だし、急に告白されて迫られるのは困るけど。でも……、ね。  モヤモヤ、モヤモヤ。心の中がうるさい。 「あ、エナちゃんだ!」  ふいに声をかけられた。はっ、このかわいい声は! 「はなのーん!」 「エナちゃーん!」  駆け寄ってきたはなのんと、ひしっと抱き合う。はなのんも帰り道みたいだ。道でばったり美少女に出会うなんて、ラッキー。  ま、わたしも美少女ですけど。
/48ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加