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「エナさん? どうかしたか?」
「……ううん」
首をふると、三条くんはぐっと顔を近づけてきた。
「なにか悩みがあるなら、聞くぞ」
(わ、やっぱり、きれいな顔だ)
近づいた真っ黒の瞳は澄んでいて、本当にわたしのこと心配してるんだって伝わってくる。三条くん、いろいろ失礼だけど、優しいのは間違いないんだよね。
「……ありがと。でもまあ、どっちかと言えば、三条くんが悩みの種かなあ~」
「な、なに? おれはエナさんに、なにかしてしまっただろうか……?」
おそるおそる聞いてくる三条くんに、わたしはくすっと笑う。
「そりゃあもう、なんかいろいろされたよ。ひどいなあ、三条くん」
「そ、それはすまない!」
わたわたとあわてる三条くんを見ながら、わたしは手を離して小走りになる。
「三条くん、ちょっとそこで待ってて!」
「え?」
急いでお店に駆け込んで、すぐまた三条くんのところに戻る。
「はい。メガネありがと! 今日は助かったよ!」
三条くんのメガネをはずして、渡す。三条くんは戸惑いながらメガネをかけた。イケメンな顔がダサいメガネに隠れちゃうのはもったいないけど、まあ、仕方ないね。
わたしは百円ショップで買ってきた色付きのサングラスをかけて、ニッと笑った。
「ど? サングラスも似合うでしょ?」
これならひとと目も合わないし、問題なし。だけど三条くんは眉を寄せた。
「帰り道にお店に寄るのは校則違反だぞ」
「かたいこと言わないでよ、真面目だなあ」
ぶう、と口をとがらせる。
「しょうがないじゃん、今日ばっかりはさ」
「……エナさん」
「なに?」
わたしは振り返る。三条くんは、じっとわたしを見ていた。
「はやくマジモノを祓ったほうがいい。こんな生活は、エナさんも困るだろう」
「……ん、そだね」
あいまいに返して、歩き出す。そりゃ、みんなと目が合わないようにするのは大変だし、急に告白されて迫られるのは困るけど。でも……、ね。
モヤモヤ、モヤモヤ。心の中がうるさい。
「あ、エナちゃんだ!」
ふいに声をかけられた。はっ、このかわいい声は!
「はなのーん!」
「エナちゃーん!」
駆け寄ってきたはなのんと、ひしっと抱き合う。はなのんも帰り道みたいだ。道でばったり美少女に出会うなんて、ラッキー。
ま、わたしも美少女ですけど。
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