第一章 私をすきにならないの⁉

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九重(ここのえ)エナ、準備できました!」  三条くんと別れて駆け込んだ、撮影スタジオ。衣装に着替えて、メイクのお姉さんに魔法みたいにお化粧を施してもらう。元気に名乗って、カメラの前へ。とたんに、ぴしっと引き締まる空気。  まぶしいライトを浴びて、わたしは、ぶあついメガネを脱ぎ捨てる。  ダサいメガネの下から現れるのは、超絶かわいい、国宝級の美少女の顔!  透けるように白い肌、おっきくて小悪魔みたいにぱっちりした瞳、形のいいくちびるに、つんとした鼻。もちろん、スタイルだってばっちり。  九重エナ、小学五年生。すまプリって、小学生向け雑誌の人気モデル。  それがわたしだ! 「はい、おーけーです。エナちゃんおつかれさま。よかったよー」 「おつかれさまでーす!」  今日の撮影もばっちり終了。ま、わたしにかかればこんなもんよ。 「え、エナちゃん! おつかれさま。今日も、すっごくかわいかった……!」  メガネをかけ直したわたしに、小柄な女の子がぱたぱたと駆け寄ってくる。 「はなのん! ありがと~!」 「もうほんと、エナちゃんすごい! あ、そ、そうだ! クッキー焼いてきたんだけど、食べる?」 「やった、食べる食べる!」  ちょっとおどおどしているこの子は、桜木ハナノ。この春、わたしと同じクラスに転校してきて、さらにはモデル仲間でもある女の子だ。ゆるふわの栗色の髪に、小柄な彼女は、引っ込み思案だけど、まさにお姫さまって容姿。  まあ、わたしも負けず劣らずの美少女なわけですが! 「んー、はなのんのクッキーおいしい!」 「よかったぁ。……そういえばエナちゃん、放課後、三条くんに呼び出されてたよね?」 「うん? そうだけど」  ぽっと、はなのんは頬を染めた。期待の目が向けられる。 「も、もしかして、告白、とか……⁉」 「ううん。そういうんじゃなかったよ」  あっさり否定すると、はなのんはちょっとがっかりした。恋バナは、みんなの大好物だからね。ご期待に応えられなくて、ごめんよ。 「えっと、じゃあ、なんの話してたの?」 「んー、あれねえ、なんだったんだろ……?」  首をかしげるわたしにつられて、はなのんも、こてんと首をかたむける。 「よくわかんないけど、でも――」  三条くんとの会話を思い出して、わたしはむっと眉をひそめた。
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