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「九重エナ、準備できました!」
三条くんと別れて駆け込んだ、撮影スタジオ。衣装に着替えて、メイクのお姉さんに魔法みたいにお化粧を施してもらう。元気に名乗って、カメラの前へ。とたんに、ぴしっと引き締まる空気。
まぶしいライトを浴びて、わたしは、ぶあついメガネを脱ぎ捨てる。
ダサいメガネの下から現れるのは、超絶かわいい、国宝級の美少女の顔!
透けるように白い肌、おっきくて小悪魔みたいにぱっちりした瞳、形のいいくちびるに、つんとした鼻。もちろん、スタイルだってばっちり。
九重エナ、小学五年生。すまプリって、小学生向け雑誌の人気モデル。
それがわたしだ!
「はい、おーけーです。エナちゃんおつかれさま。よかったよー」
「おつかれさまでーす!」
今日の撮影もばっちり終了。ま、わたしにかかればこんなもんよ。
「え、エナちゃん! おつかれさま。今日も、すっごくかわいかった……!」
メガネをかけ直したわたしに、小柄な女の子がぱたぱたと駆け寄ってくる。
「はなのん! ありがと~!」
「もうほんと、エナちゃんすごい! あ、そ、そうだ! クッキー焼いてきたんだけど、食べる?」
「やった、食べる食べる!」
ちょっとおどおどしているこの子は、桜木ハナノ。この春、わたしと同じクラスに転校してきて、さらにはモデル仲間でもある女の子だ。ゆるふわの栗色の髪に、小柄な彼女は、引っ込み思案だけど、まさにお姫さまって容姿。
まあ、わたしも負けず劣らずの美少女なわけですが!
「んー、はなのんのクッキーおいしい!」
「よかったぁ。……そういえばエナちゃん、放課後、三条くんに呼び出されてたよね?」
「うん? そうだけど」
ぽっと、はなのんは頬を染めた。期待の目が向けられる。
「も、もしかして、告白、とか……⁉」
「ううん。そういうんじゃなかったよ」
あっさり否定すると、はなのんはちょっとがっかりした。恋バナは、みんなの大好物だからね。ご期待に応えられなくて、ごめんよ。
「えっと、じゃあ、なんの話してたの?」
「んー、あれねえ、なんだったんだろ……?」
首をかしげるわたしにつられて、はなのんも、こてんと首をかたむける。
「よくわかんないけど、でも――」
三条くんとの会話を思い出して、わたしはむっと眉をひそめた。
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