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「あれ。でもはなのん、家こっちじゃないよね?」
「う、うん。ちょっと、その、お散歩してて……」
はなのんはもじもじと、照れたように笑った。なんだろ?
そう思っていると、はなのんの後ろから制服姿の男の子が現れる。その子は、にっこりと笑顔を浮かべてわたしを見た。
「こんにちは。ハナノちゃんのお友だち?」
うわ、イケメン……。わたしはぽかんと、その男の子を見る。ふわっとやわらかい髪に、王子さまみたいな、きらきらオーラ。でもこの子、どっかで見たことある。
「……あっ、わかった! 天才役者のルイルイだ!」
「ぼくのこと知ってるんだ。うれしいな」
完ぺきな笑顔は、見られることに慣れている芸能人のものだ。ルイルイは、テレビにも出ている役者さんで、いま女の子たちに大人気なんだ。ドラマとかにも出てる、中学二年生の男の子。
おお、本物はじめて見た!
「ルイくん。こちらは九重エナちゃん。わたしのモデルの先輩で、あこがれなんだ!」
「ああ、エナちゃんね! 知ってるよ。すごく人気だって。いつか雑誌で共演したいと思ってたんだ」
にこっと言ってくれるルイルイに、わたしも嬉しくなる。人気役者に、共演したいって言われるとか、すごくない⁉ それに、はなのんが、わたしのことあこがれって言ってくれた!
ついつい、えっへんと胸を張る。
「あれ、でもなんで、はなのんとルイルイがいっしょに?」
「あ、あのね、この前スタジオで偶然会って。そのときに仲よくなってね、それで……!」
必死に説明してくれるはなのん。その頬は、ぽわっと桃色。……ははーん、なるほど。
「はなのんの好きなひと、ルイルイでしょ?」
耳もとで、こそっとささやく。ぼんっと、はなのんは桃色を通り越して真っ赤になった。ミサンガに恋愛成就のお願いをこめた相手、それがルイルイだったんだ。美男美女、お似合いじゃん!
「ひ、秘密にしてね……!」
「うんうん。大丈夫!」
と、わたしたちが内緒の話をしていると、ルイルイは三条くんを見た。
「きみ、スタイルいいね。きみもモデルさん?」
「あ、いえ。おれはエナさんのクラスメイトです」
「そうなんだ。それにしても、きみ……」
ルイルイがじーっと三条くんを見て、微笑んだ。
「そのメガネ、ダサいね」
「……む⁉」
あはは、とルイルイは王子さまスマイル。対して三条くんは、ガーンとショックを受けていた。え、なんで?
「だ、ダサいと言われたのは、はじめてだ……」
「いや、みんな思ってたよ、三条くん」
「なに⁉」
ついついつっこんだわたしに、さらにショックを受けている。え、ほんとにダサいメガネって言われてるの気づいてなかったの? まじ?
「三条くん、ほんとに鈍感だね」
「ダサい……、そうか、このメガネはダサいのか……」
三条くんはブツブツと言いながら歩き出す。相当ショックだったみたい。
「ぼく、悪いこと言っちゃったかな?」
ルイルイは首をかしげていた。わたしは苦笑するしかない。
「どんまい、三条くん」
「ダサい……、おれのメガネが……」
あー、ダメだ、これ。
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