第六章 下校・パニック!

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「あれ。でもはなのん、家こっちじゃないよね?」 「う、うん。ちょっと、その、お散歩してて……」  はなのんはもじもじと、照れたように笑った。なんだろ?  そう思っていると、はなのんの後ろから制服姿の男の子が現れる。その子は、にっこりと笑顔を浮かべてわたしを見た。 「こんにちは。ハナノちゃんのお友だち?」  うわ、イケメン……。わたしはぽかんと、その男の子を見る。ふわっとやわらかい髪に、王子さまみたいな、きらきらオーラ。でもこの子、どっかで見たことある。 「……あっ、わかった! 天才役者のルイルイだ!」 「ぼくのこと知ってるんだ。うれしいな」  完ぺきな笑顔は、見られることに慣れている芸能人のものだ。ルイルイは、テレビにも出ている役者さんで、いま女の子たちに大人気なんだ。ドラマとかにも出てる、中学二年生の男の子。  おお、本物はじめて見た! 「ルイくん。こちらは九重(ここのえ)エナちゃん。わたしのモデルの先輩で、あこがれなんだ!」 「ああ、エナちゃんね! 知ってるよ。すごく人気だって。いつか雑誌で共演したいと思ってたんだ」  にこっと言ってくれるルイルイに、わたしも嬉しくなる。人気役者に、共演したいって言われるとか、すごくない⁉ それに、はなのんが、わたしのことあこがれって言ってくれた!  ついつい、えっへんと胸を張る。 「あれ、でもなんで、はなのんとルイルイがいっしょに?」 「あ、あのね、この前スタジオで偶然会って。そのときに仲よくなってね、それで……!」  必死に説明してくれるはなのん。その頬は、ぽわっと桃色。……ははーん、なるほど。 「はなのんの好きなひと、ルイルイでしょ?」  耳もとで、こそっとささやく。ぼんっと、はなのんは桃色を通り越して真っ赤になった。ミサンガに恋愛成就のお願いをこめた相手、それがルイルイだったんだ。美男美女、お似合いじゃん! 「ひ、秘密にしてね……!」 「うんうん。大丈夫!」  と、わたしたちが内緒の話をしていると、ルイルイは三条くんを見た。 「きみ、スタイルいいね。きみもモデルさん?」 「あ、いえ。おれはエナさんのクラスメイトです」 「そうなんだ。それにしても、きみ……」  ルイルイがじーっと三条くんを見て、微笑んだ。 「そのメガネ、ダサいね」 「……む⁉」  あはは、とルイルイは王子さまスマイル。対して三条くんは、ガーンとショックを受けていた。え、なんで? 「だ、ダサいと言われたのは、はじめてだ……」 「いや、みんな思ってたよ、三条くん」 「なに⁉」  ついついつっこんだわたしに、さらにショックを受けている。え、ほんとにダサいメガネって言われてるの気づいてなかったの? まじ? 「三条くん、ほんとに鈍感だね」 「ダサい……、そうか、このメガネはダサいのか……」  三条くんはブツブツと言いながら歩き出す。相当ショックだったみたい。 「ぼく、悪いこと言っちゃったかな?」  ルイルイは首をかしげていた。わたしは苦笑するしかない。 「どんまい、三条くん」 「ダサい……、おれのメガネが……」  あー、ダメだ、これ。
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