第六章 下校・パニック!

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「へー、ルイルイ、またドラマやるんだ」 「うん。少女漫画が原作のドラマ。エナちゃんも、よかったら見てね」 「みるみる~!」  わたしたちは、いっしょに帰り道を歩いていた。せっかくのデートをしていたはなのんには、申し訳ないなあと思ったけど、「エナちゃんといっしょなら、うれしい!」って言ってくれたんだ。かわいい、天使。  ルイルイも優しくていい人だ。ルイルイのほうが年上なのに、敬語いらないよ、って気さくに言ってくれた。かっこよくて優しいんだから、そりゃ人気俳優にもなるよね。  わたしたちは、ちょっとだけ寄り道して、大きな公園を歩く。公園は池を囲うように、散歩コースがある。夏の陽ざしに、池の水がきらきらしていた。  振り向いて、三条くんを見る。 「三条くーん、回復した?」 「……ああ」  メガネをダサいと言われた三条くんは、まだまだどんよりモード。わたしは、とんとんっと軽い足取りで三条くんのとなりに並ぶ。 「ルイルイ、またドラマやるんだって。すごいよね。『ピュアに恋しよ』、略して『ピュア恋』!」 「ああ、その漫画なら、おれも知っているぞ」 「おっ、そうなんだ! 楽しみだよね~」  わたしたちの前を歩くはなのんとルイルイは、仲よさそうに笑い合っている。 「……さすが、モデルと俳優は顔が整っているな」  三条くんがぼそっと言う。 「おれはダサいから……、ここにいるのがつらい……、芸能人ばかり……」 「落ち込みすぎでしょ」  わたしはぷっと噴き出した。池の水はこんなにきらきらして、天気も快晴。なのに、きのこも生えてきちゃいそうな三条くんの暗い背中を、ばんばんと叩く。 「だーいじょうぶ! 三条くんもメガネはずせば、イケメンだよ! メガネはずせば!」 「つまりメガネはダサいと……」 「メガネはね!」  ちーん、と三条くんが肩を落とす。  やば、ちょっといじめすぎたかも? 三条くん真面目だから、冗談通じないんだよね。 「あ、ごめん。お母さんから電話だ……!」  突然、はなのんがスマホを持って、走り出した。わたしたちは立ち止まって、はなのんの話が終わるのを待つ。 「あれ、まだその子、落ち込んでるんだ」  ルイルイが、三条くんを見て目を丸めた。 「ごめんね。ぼくが変なこと言っちゃったから」 「あーいや、これはわたしが追い打ちかけちゃったの。ルイルイは気にしないで」 「そう? それにしてもエナちゃん」 「んー?」  ルイルイは、わたしに顔を寄せた。うわ、さすが俳優。まつ毛ながっ。つい、どきっとしちゃったよ。 「ハナノちゃんから聞いたけど、撮影以外はずっとメガネしてるんだよね? 身バレ防止?」 「あー、いや、わたし、目悪くって」  ほんとはマジモノのせいなんだけどね。でもそんなこと言えないから、笑ってごまかす。 「そっか……」  ルイルイは、じーっとわたしに顔を近づけたまま動かない。な、なに? わたしの顔、なんかついてる? そう思っているうちに、ルイルイはわたしの腕をつかんだ。  んんん? 「エナちゃん」  真剣な声で言われて、どきっとする。  あれ、なんだろう。  なんか、いやな予感がした。 「な、なに、ルイルイ」  ルイルイはわたしの耳もとで、ささやいた。 「好きだ」
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