18人が本棚に入れています
本棚に追加
/48ページ
「へー、ルイルイ、またドラマやるんだ」
「うん。少女漫画が原作のドラマ。エナちゃんも、よかったら見てね」
「みるみる~!」
わたしたちは、いっしょに帰り道を歩いていた。せっかくのデートをしていたはなのんには、申し訳ないなあと思ったけど、「エナちゃんといっしょなら、うれしい!」って言ってくれたんだ。かわいい、天使。
ルイルイも優しくていい人だ。ルイルイのほうが年上なのに、敬語いらないよ、って気さくに言ってくれた。かっこよくて優しいんだから、そりゃ人気俳優にもなるよね。
わたしたちは、ちょっとだけ寄り道して、大きな公園を歩く。公園は池を囲うように、散歩コースがある。夏の陽ざしに、池の水がきらきらしていた。
振り向いて、三条くんを見る。
「三条くーん、回復した?」
「……ああ」
メガネをダサいと言われた三条くんは、まだまだどんよりモード。わたしは、とんとんっと軽い足取りで三条くんのとなりに並ぶ。
「ルイルイ、またドラマやるんだって。すごいよね。『ピュアに恋しよ』、略して『ピュア恋』!」
「ああ、その漫画なら、おれも知っているぞ」
「おっ、そうなんだ! 楽しみだよね~」
わたしたちの前を歩くはなのんとルイルイは、仲よさそうに笑い合っている。
「……さすが、モデルと俳優は顔が整っているな」
三条くんがぼそっと言う。
「おれはダサいから……、ここにいるのがつらい……、芸能人ばかり……」
「落ち込みすぎでしょ」
わたしはぷっと噴き出した。池の水はこんなにきらきらして、天気も快晴。なのに、きのこも生えてきちゃいそうな三条くんの暗い背中を、ばんばんと叩く。
「だーいじょうぶ! 三条くんもメガネはずせば、イケメンだよ! メガネはずせば!」
「つまりメガネはダサいと……」
「メガネはね!」
ちーん、と三条くんが肩を落とす。
やば、ちょっといじめすぎたかも? 三条くん真面目だから、冗談通じないんだよね。
「あ、ごめん。お母さんから電話だ……!」
突然、はなのんがスマホを持って、走り出した。わたしたちは立ち止まって、はなのんの話が終わるのを待つ。
「あれ、まだその子、落ち込んでるんだ」
ルイルイが、三条くんを見て目を丸めた。
「ごめんね。ぼくが変なこと言っちゃったから」
「あーいや、これはわたしが追い打ちかけちゃったの。ルイルイは気にしないで」
「そう? それにしてもエナちゃん」
「んー?」
ルイルイは、わたしに顔を寄せた。うわ、さすが俳優。まつ毛ながっ。つい、どきっとしちゃったよ。
「ハナノちゃんから聞いたけど、撮影以外はずっとメガネしてるんだよね? 身バレ防止?」
「あー、いや、わたし、目悪くって」
ほんとはマジモノのせいなんだけどね。でもそんなこと言えないから、笑ってごまかす。
「そっか……」
ルイルイは、じーっとわたしに顔を近づけたまま動かない。な、なに? わたしの顔、なんかついてる? そう思っているうちに、ルイルイはわたしの腕をつかんだ。
んんん?
「エナちゃん」
真剣な声で言われて、どきっとする。
あれ、なんだろう。
なんか、いやな予感がした。
「な、なに、ルイルイ」
ルイルイはわたしの耳もとで、ささやいた。
「好きだ」
最初のコメントを投稿しよう!