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「好きだ」
「……へっ?」
わたしはぽかんとする。
「世界で一番、きみが好き」
ルイルイは手の力を強めて、繰り返す。その瞳が、ぎらっと光るのが見えた。その瞬間、わかった。
これ、マジモノの力だ……!
でもなんで? わたしいま、サングラスしてるのに。
「ルイルイ、ちょっと落ち着いて! 三条くん、たすけ――ってまだ落ち込んでる⁉」
三条くんはちーん、と口から魂が飛び出していた。こんなときに!
「三条くん! 三条くんってば!」
「エナちゃん、ぼく以外のこと見ないで? ぼく、さびしいよ」
「ルイルイは落ち着こう⁉ ね?」
「落ち着いてるよ。ああ、でも、きみのことが好きすぎて、気が狂っちゃいそうだな」
さすが人気俳優! ドラマチックな言葉がぽんぽん飛び出すよ!
ま、まずい。このままだと、まずい! 三条くん……!
と、そのとき、背後ではっと息をのむ音がした。振り向くと、真っ青になったはなのんが立っていた。
――あ。これ、本当にダメなやつだ。
はなのんの大きな瞳に、じわっと涙が浮かぶ。好きな男の子が、ほかの女の子に告白していたら、もちろんショックに決まってる。でも、ちがうの。ルイルイは、本当はわたしのこと、好きじゃないんだから。
「はなのん、ちがうの……」
わたしが言い切る前に、はなのんはくるりと背を向けた。
「はなのん、待って!」
どうしよう。どうしよう――……!
「悪しき者との縁を断ち切れ」
ふいに、ぼそっと聞こえた声に、わたしははっとする。
「解……っ!」
三条くんのひそめた声とともに、ぽわっとルイルイの額に星の光が浮かぶ。はなのんはそれを見ていなかったけど、なにか感じたのか、振り向いた。
とたんに、わたしは肩をぐっとつかまれて、ルイルイから離される。一瞬、なにが起きたかわからなかった。
(あ、わたし、三条くんに抱き寄せられてる……?)
見上げれば、すぐ近くに三条くんの顔がある。
三条くんはメガネをすっとはずした。きれいな切れ長の瞳が現れる。真剣な顔。
どきっと。
さっきルイルイに感じたものとは違う、胸の高鳴りがした。
三条くんは、ルイルイに言う。
「オレノホウガ、ズット、カノジョヲスキダッタ!」
「……うん?」
あまりにも棒読みなセリフに、わたしは目を白黒させる。え、いまのなに?
「あっ、それ、『ピュア恋』のセリフ!」
なにかに気づいたのは、はなのんだ。
「主人公をとりあって、ナツくんとフユくんが喧嘩するシーン! フユくん、メガネ男子なんだ。それで、メガネを取って、さっきのセリフを言うんだよ!」
なぜかとても興奮した様子で、はなのんはぐっと拳を握り、瞳をキラキラさせた。
「すごい三条くん! 漫画のシーン、完全再現だった!」
え。棒読みだったけど、あれで再現できてたの?
だけどはなのんは、そっかあと納得したみたい。
「みんなで、お芝居の練習してたんだね! よ、よかったぁ」
「練習……? ぼく、そんなのしてたかな」
正気に戻ったルイルイは首をかしげたけど、まあいっかと、こっちも納得したらしい。
ど、どうにか、ごまかせたっぽい……?
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