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「危なかったな。気づくのが遅くなってすまない」
三条くんはメガネをかけて、ふうとため息をついた。はなのんたちに聞かれないように、声をひそめている。
そっか。ルイルイを正気に戻して、はなのんのフォローまでしてくれたんだ。
「……あの、ありがとう、三条くん」
「ああ」
「ピュア恋のセリフ、よく知ってたね」
「原作を読んだことがある。面白かったぞ」
「へー、三条くん漫画読むんだ。意外。ガリ勉だと思ってた」
「ガリ勉……⁉ おれはそんな印象が……⁉」
あ、またまた三条くんが傷ついてしまった。三条くんの傷つくポイント、よくわかんないな。
わたしはくすっと笑って、それから前を向く。
はなのんとルイルイは、また笑いながら歩いていた。わたしのせいで、あのふたりの関係が壊れちゃうところだったんだ……。
「わたし、サングラスで目を隠してたのに」
「マジモノの力が、強まっているのかもしれない。はやく祓わないと、悪化するぞ」
三条くんは真面目な声で言う。
……そうなのかもしれない。
みんなに好かれるのはうれしいけど、この力は、危険だ。ひとの気持ちを、勝手に変えてしまうなんて。このままじゃ、いけない気がする。
「――三条くん。わたしのマジモノ、祓ってくれる?」
わたしは決心して、三条くんを見上げた。三条くんは、すこしおどろいた顔をしてから、しっかりとうなずく。
「ああ。任せろ」
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