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第八章 おまじないはいつから?
「エナさん、どうした」
「いや、なんか……つかれた」
がくっと机に突っ伏する。三条くんは不思議そうだ。そりゃあ、三条くん鈍感だからね! わたしは大変だったんだよ!
授業中も、休み時間も、給食のときも。クラスの女の子たち、みーんな三条くんを意識しまくりなんだもん!
鈍感三条くんはなんとも思ってなさそうだけど、わたしは気になって仕方ない。かっこいいよね、やばくない、って言葉がひそひそと聞こえてくるんだ。
ええ、そうだよ、三条くんはかっこいいよ! でもさ、三条くんのいいところ、顔だけじゃないからね⁉
めっちゃ鈍感なとことか、ダサいって言われるの気にするとことか、面白いし! ちょいちょい失礼だけど、優しいし! 顔だけで、きゃあきゃあ言うんじゃありません!
ぷくう、と頬をふくらませて、三条くんを見る。
「どうした?」
「……三条くんのせいで、悩みが増えました」
「む⁉ おれはまた、なにかしてしまっただろうか!」
「うん」
がーん、とショックを受けた三条くん。……その顔が面白いから、まあ、許してあげよう。
「行こ。学校じゃ、スマホ見れないし」
うちの学校、スマホは持ってきてもいいんだけど、校内で使うには先生の許可がいるんだ。面倒くさいから、使うなら外に出たほうがいい。
わたしは三条くんを連れて、学校近くの公園に向かった。
「あっつー」
日陰のベンチに座って、ぱたぱたと手であおぎながら、スマホを差し出す。ほんとはおしゃれで涼しいカフェとか行けたら、かっこいいんだけどね。先輩のモデルさんが学校帰りに制服でカフェに行くのを見ると、あこがれる。
でも下校中にお店に寄るのは校則違反だし、真面目な三条くんも怒っちゃう。だから、公園くらいしか行けない。
「はい。むかしの写真、いろいろ入ってるよ」
「助かる」
三条くんは、スマホを持って、画面をのぞきこんだ。実は昨日、三条くんから頼まれ事をしていたんだ。わたしが小さいころの写真を見せてほしいんだって。だからお父さんに頼んで、写真データをごっそりわたしのスマホに入れてもらった。
生まれたときから、いままでの写真だから、すごい枚数だ。お父さんもお母さんも、わたしにメロメロで、めちゃくちゃ写真を撮りまくってきたらしい。愛されてる。さすが美少女のわたし!
「でも、写真なんて見てどうするの?」
三条くんはスマホに視線を落としたまま、答える。
「おれは、今年の春にエナさんがおまじないをして、その力が暴走しているんだと思っていた。だが、ちがうんだろう?」
「うん。今年に入って、おまじないをした覚えはないよ」
「それなら、むかし行ったものが、いまになって暴走をはじめたのかもしれない」
「むかし……」
「写真からでも、おまじないの力は感じられるから、手がかりになるはずだ」
力っていうのは、わたしにはよくわからないけど。でも三条くんに任せれば、大丈夫かな。わたしは三条くんの横から、画面を見る。
「あっ、三条くん! これ見て!」
「なんだ、なにか思い出したのか?」
「これ、わたしがはじめて雑誌の表紙になったときの写真! 超かわいくない⁉」
がくっ、と三条くんがずっこける。
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