第八章 おまじないはいつから?

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「……まじめに探してくれないか」 「だってー、ほら、見て。天使じゃん」  ちまっと小さなわたしが笑顔で表紙を飾っている。幼稚園のときだったかな。わたし、けっこう長い間モデルやってるんだよ~。 「お父さんがね、わたしが雑誌に出たところ、全部データで残してくれてるんだ~」  三条くんからスマホをうばって、操作する。お父さんのつくった、『エナ・お仕事特集』ってフォルダには、モデルとしての写真ばかりが入ってる。 「これは一年生のとき。で、こっちが二年の春!」  次々とスライドさせて、写真を見せていく。だだだーっと、三条くんが文句をつける暇を与えず、最近の写真までたどりついた。 「ね、どうどう? わたし、かわいいでしょ?」  おまじないの力だけで人気になったわけじゃないんだからね!  三条くんはじっとスマホを見ていた。 「ふむ。興味深いな」  ん? 興味深い? 「……かわいいじゃなくて?」  わたしのじとっとした目にも気づかず、三条くんはふむふむ、うなずいている。……かわいいって言ってくれないのね。あー、はいはい。そうですか。  なによ、興味深いって!  はあ~、と深いため息をつく。どうやったら、かわいいって言ってくれるんだよー、もう! 「エナさん」 「んー?」 「二年生の写真を、もう一度見せてくれ」 「へ?」  首をかしげるわたしに、三条くんは真剣な顔で言う。 「二年の夏ごろだ。そこから、おまじないの力が瞳に宿っているように見える」  わたしはきょとんとする。それから、はっとした。 「に、二年ね。了解!」  写真を探して見せると、三条くんはうなずいた。 「やはり、このあたりだな。マジモノの暴走とまではいかないが、おまじないの力がある」 「へえ。でもこのとき、おまじないなんてしたかなあ……?」  低学年のときは、いまより夢見がちだったから、おまじないも好きだったけどさ。いちいち覚えてないよ。 「小さなことでもいい。思い出してくれ」 「そう言われてもねえ……」 「写真はこれだけしかないのか?」 「家には、ほかのデータもあるかもだけど、わかんない」  迷いながら言うと、三条くんはがしっとわたしの肩をつかんだ。 「では、見せてくれ」 「えええっ、やだよ。アルバムなんて、学校に持ってくるの重いし!」 「なら、明後日、おれがエナさんの家に行く」  明後日……? あ、土曜日か。 「って、三条くんがうちに来るの⁉」  思わず叫んだわたしに、三条くんは首をかしげた。 「なにか用事があったか?」 「い、いや、ないけどさ……」  土曜日に家に来るなんて、お家デートみたいじゃない⁉ 女の子を家に呼んだことは何回もあるけど、男の子ははじめてだよ! 「じゃあ、明後日。よろしく頼む」  わたしが戸惑っているのも気づかないのか、三条くんはサクサクと決めてしまった。 「う、うん。わかった」  え、どうしよう。なんか、緊張するんだけど……!
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