第八章 おまじないはいつから?

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 お家デート。三条くんと、お家デート。……やばいな。なんかわかんないけど、やばい。  つぎの日は雨だった。朝、傘をさしながら学校の下駄箱に向かう。頭の中はずっと「土曜日、どうしよう」って考えでいっぱいだ。  いや、べつに、女の子と遊ぶときみたいに出迎えればいいんだろうけどさ、なんか、ね! やっぱり、男の子だと、ちょっとちがうじゃん⁉ 「ハナノちゃん、おはよ~。あ、その髪型かわいいね」  ふと、そんな声が聞こえて、顔を上げる。廊下の先に、はなのんと、クラスの女の子がいた。はなのんはいつも下ろしている髪を、編み込みでまとめていた。 「雨の日って、髪ぼさぼさになっちゃうから。結んでみたんだ。ど、どうかな?」 「似合う~、さっすがモデル!」  楽しそう。わたしも会話に入れてもらお!  急いで上履きに履き替えて、駆け寄ろうとする。だけど、聞こえた会話に、ぴたっと足を止めた。 「エナちゃんもモデルだけど、あのメガネかけてると、モデルって感じしないよねえ」 「そうかな? エナちゃんはなにしてても、かわいいよ。わたしのあこがれだもん!」 「ハナノちゃん、エナちゃんがきっかけでモデルになったんだっけ」 「うん!」  そそそ、と下駄箱のすみに隠れる。自分の話をされてると、ちょっと声かけづらい。というか、メガネは仕方ないんだよ! わたしだって、できればはずしたいんだけどさ! 「でもハナノちゃんも、人気すごいよね。今年は人気投票一位いけちゃうんじゃない?」  どきっ。  わたしは息をひそめた。 「いまのところはエナちゃんが一位みたいだけど、がんばってね」 「そうだね。エナちゃんに追いつきたいから、が、がんばってみるよ!」 「お。その意気だ! あーあ。クラスメイトにふたりもモデルいると、どっち応援していいか迷うわ~」  ふたりは笑いながら歩いて行く。  ……べつに、悪口言われたわけじゃない。  でも、どうしてか、胸がずきっとした。 「こんなところで、負けてられない……」  お母さんみたいなトップモデルになるんだから、はなのんには負けられない。 「エナさん?」 「うわぁっ、三条くん⁉ いつのまに⁉」  わたしはびっくりして飛び上がった。背後には、いつ来たのか、三条くんが立っていた。濡れた傘をまとめながら、三条くんは首をかしげる。 「そんなところでなにをしているんだ? まるで忍者みたいだったぞ」 「忍者?」  わたし、そんなだった? 「いや、べつに、なにもないんだけどさ……」 「そうか。それにしても、下駄箱で会うのはめずらしいな。エナさん、いつもギリギリに登校してくるから」 「あー、今日は雨降ってるから、走り込みしてないの」  本当は走りたくてたまらないんだけど、濡れるのいやだし。    わたしたちは、いっしょに廊下を歩き出した。  雨がしとしと、しと。  んー、はなのんも言ってたけど、雨の日って髪の調子が悪い。わたしも結んでこればよかったかなあ。男子って、女子の髪型チェンジに弱いじゃん?  三条くんもかわいいって言ってくれたかもなのに、チャンス逃しちゃった!
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